2011年02月01日

尊敬すべき作り手の方々の「意志」を知る努力

戦中の文豪、太宰治の作品というと『斜陽』『ヴィヨンの妻』『走れメロス』そして『人間失格』などの代表作が挙げられる事が多いですが、
最近『御伽草子』の四編を読み驚嘆しました。


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氏の文学は村上春樹さんと柴田元幸さんの対談内容を著した「サリンジャー戦記」という本の中で、
「ライ麦畑でつかまえて」、「星の王子さま」と共に民族意識的に一種のサンクチュアリとなっているという旨の考察が示されており、
私的にもアンタッチャブルとまでいかないものの、そういった意味に鑑み、デリケートでセンシティブな文学であるという印象がありますので、
どのような切り口で書いたらいいのかと些かまごついてしまいますが、
それまで自分の中に漠然と存在した太宰文学への印象というのは、
数々の文芸評論家の方が仰る『青春の文学である』という最もオーソドックスな認識に近く、
末尾解説に於いても奥野建男氏は『太宰への感激は人生の一時期にかかる麻疹のようなものだ』と、
多くの読者が一時期は熱狂的に氏の文学に傾倒するが、
何れ遠ざかっていく傾向があるという独特な青春の文学に対する読者の一般的な嗜好性を分析しておられます。
斯く言う僕もその一人でしたが、そのような話を先日とある読書家な友人に話していると、

「君が挙げた作品(文頭の作品群)のみで太宰文学の印象を決定づけたり、
批評するのはフェアではない。御伽草子を読むと一層意外な太宰文学の神髄を垣間見ることが出来るよ」

とアドバイスを頂き早速購入し読んでみた次第ですが、
その友人の仰るとおり作者の独特のユーモラスによって四編のフォークロアが見事に鋳造し直され、
慣れ親しんだ伝承や民話がより理解しやすくコミカルに仕上がっており、
太宰文学の中でも芸術的に最高の傑作であるというのも決して誇張した表現ではないように思います。

特にカチカチ山は独特の諷刺を風采上がらぬ愚鈍大食の醜男と、禍禍しい酷薄さを持つ十六歳の処女にそれぞれ狸と兎に準えることで巧みに表現しており、
今まで読んだ古典文学作品でこれほど大笑いをした経験は一度もなく実に愉快でした。
しかしそれと同時にそれまで自分が抱いていた、『人間失格』を筆頭とするポピュラーな作品から一方的に読み取っていた、
偏見との誹りも免れないほどの太宰文学への認識と知識の狭さというものを痛感し酷く情けない思いがしました。

生兵法は大怪我の元とは正にこの事かと思い、改めて浅はかな知識で人を判断してはならないという教訓になりましたが、
僕の場合文学のみならず、こういった認識の浅さは音楽と接していても発生します。

というのも近頃は専らベートーベンのピアノソナタ悲愴の練習をしているのですが、
そもそもベートーヴェンのピアノソナタとは、僕は元来あまり接点が無く寧ろ交響曲などを中心に聴いていました。
そんな中、ふとリストの愛の夢3番やショパンのエチュード10-3などに並ぶこの美しい曲を自分で演奏してみたいと思い立ち鍵盤と向き合ったわけですが、
今回、練習しているときに特に強く感じたのは、何度も耳にタコができるくらいに聴いた曲でも、
ただ集中して聴いているだけでは得られない様々な作り手の意志のような情報が、
譜面を解読し、鍵盤に乗せていくことで見えてきたということです。
(大層なことを言っていますが僕はヘタですヨ)

此には前述の太宰文学考察と同様、深く作品達と接する事でより大きな充足感を得ることができた多少の満足感はありますが、
それと同時に、この世の中には無数の芸術があるにも関わらず、
一人の芸術者、一つの作品にこれほどの時間を費やさねば、
自分はその神髄の一部分を垣間見ることすらできないことに対する絶望にも似た焦燥感を感じました(大袈裟でしょうか 笑)

そんな訳で、世に数多ある小説、マンガ、アニメ、映画、ドラマなどの身近な作品と対峙するとき、
極力その作品に関する情報を収集することなども念頭に置かねばならないでしょうが、まず出会ったばかりのものに対して

この作品は絶対に面白いはずだ!

と半ば高を括る心境で向き合うように意識することで、その作品の行間に内包される旨味を掬い上げやすく、
延いては神髄とやらの片鱗を窺い知る助けとなるんだと考えた訳です(あくまで僕の場合の話ですが。)

例えば以前は映画館に行っても
「お金払って、時間を割いて来ましたよ、さあ楽しませて下さいよ?」
というようなテンションで観ていましたが、
本当の面白さというのは頭をよく使って観察し、考察しないと
僕の場合は見えてこないということになんとなく気づいてからは、
このシーンでの俳優の表情や感情の発露は、もう一度初めからこのシーンを念頭に置いて読み取らないといけないな。
このセリフでプロデューサーや監督が言いたかったことって一体なんなんだろう??

と色々考えるようになりました。

そうすることで、以前は苦手だった映画も好きになれただけでなく、
以前から好きだった映画がより好きになれるようになりました気がします。

そういった意味に於いては特に最近、音楽業界はCDからオンライン配信に切り替わったことで、
ジャケットや歌詞カードに特記されるようなデザイン情報が減ってしまい、
プロのアーティストの中には苦悩しておられる方もいらっしゃるようです。

例えばミスチルの桜井さんは以前テレビ番組において、
「音楽というものが単にLとRの情報であるのが、すごく寂しいと思うんです。で、
音楽ってもっといろんなモノをパッケージできると思うんですよ、CD屋さんに買いに行ったときの
景色とか…手にした瞬間のドキドキ感とか…
そういう色々な感覚を使った物の方が価値があると思っているんですよ」


と仰っていたのを印象的に覚えています。
本当に素晴らしいお言葉だと思いますし、これだけ物理媒体のマーケットシェアが衰退した昨今において
彼らのベスト盤が百万枚以上も売れる背景にはこういった確固たるポリシーが存在するんだろうなと拝察します。

僕自身も、
独り善がりなオーディオファイルの一員として
エセバイク乗り&クルマ乗りの一員として、
下手っぴ楽器演奏者の一員として、

これからもそういった尊敬すべき様々な分野の作り手の「意志」を知る努力をしたいと思いました。


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posted by makomako972 at 02:11| 読書 | 更新情報をチェックする


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