2013年06月18日

冷たい方程式  -トム・ゴドウィン-

アニメ機動戦艦ナデシコ第八話「温めの冷たい方程式」(會川昇)を見ていた時に、
作中この短編が紹介されており内容に興味を抱いたので、
後日このアンソロジーを購入し、読んでみた、、
というのがSF小説の金字塔といわれる本書との出会いです。
  
P6188270[1].jpg

Justice with Michael Sandelと本書の関連


ただ一人の乗員を目的地まで届ける片道分の燃料しか積んでいない
緊急発進艇に密航者がいたとしたら、パイロットのすべきことは一つしかない

―船外放棄!  

だがそれが美しい娘で、しかもたった一人の兄にあいたさに
密航したのだとしたら、あなたならどうします?

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大筋の話はこのハヤカワ文庫版裏の
説明通りの内容ですが、改めて読んでみて
思い起こすのは、ハーバード大学の
教授をしておられコミュニタリアニズムの
代表的論者として有名な
マイケル・サンデル氏が同校の講義
Justice with Michael Sandelにおいて
例題として挙げておられた
「暴走する路面電車」の話です。

A、自分が運転している路面電車が時速100km/hで走行している。
すると目の前に五人の作業員を発見したので
ブレーキを掛けようとしたが故障して効かない。
待避線に進路を変えれば、そこにいる一人の
作業員を犠牲にして通常路線にいる五人の作業員を救助できる

B、自分は暴走列車を見下ろせる橋の上にいる、
Aと変わらず路面電車の先には五人の作業員がいるが、
今度は待避線が存在しない。
自分の隣には太った男がおり、この男を突き落とせば列車は止められる
(この場合は自分は小柄で止めることが出来ないと認識している)
で、どうするか。


という二つの例題ですね。
前者はイギリスの哲学者フィリッパ・フットが
提唱したトロリー問題に着想を得た功利主義と
義務論の優先順位を問い掛ける倫理学の
思考実験であると拝察しますが、教授は更に
Bの問題を付帯させることで、AとBの倫理的齟齬を
浮き彫りにさせているのがなんとも特徴的です。


Collateral damageと、秀逸だと感じた文学的表現



本書、冷たい方程式の主人公は血清を届ける
任務中にこの道徳的ジレンマに遭遇してしまうことを鑑みて
これはCollateral damage
(戦闘中の民間人殺傷、建物の損害などといった付帯的損害を意味する)であるとも言える。

と分析しておられるレビュアーの方がおられ、ああ成る程、
そういった考え方もあるのかと勉強になりましたが、
改めて方程式ものという一つの
ジャンルを築き上げたこの傑作の奥の深さには驚かされるばかりです。
古代ギリシアの哲学者、カルネアデスが出したといわれる問題、
カルネアデスの舟板の寓話を基として考えるなら、
EDSの操舵士である主人公の行った行為は本書の内容通り
法的に問題は無く罰せられることもなく、この日本の司法に於いても同様に、
刑法第37条「緊急避難」に起因する判例は幾多存在するのでしょう。
しかしこの後味の悪さと言ったら正直ない(笑)

そういう意味ではこの「冷たい方程式」というタイトルは
正しく当を得たものであるなとも思い、自然摂理の冷たさ、
現実の冷たさ、冷酷、冷徹、そして少女が投げ出される
宇宙空間の冷たさに至るまで。
そしてそれを幾ら無垢で崇高な感情を人の手で重ねたとしても、
決して揺るがすことのができない事実を裏付ける方程式の冷たさ。
初めて読んだときは、徹底して登場する人々は温かいのに、
人以外は徹底して冷たいといった印象を受けたのを覚えています。

因みにラスト、少女がいよいよ宇宙空間に出ていく為、
エアロックに入って行ったとき、勤めて冷静を装う幼気な姿を表した
「彼女はエアロックに入り、こちらを振り向いた。
喉元の震えが、狂ったような心臓の動悸を隠そうとする努力を裏切っていた。」(伊藤典夫訳)
という一文は、彼女のそれまでの人生の充実と充足、
それらがこれからも続いて行くであろうという希望や願望、
そしてその全てを容赦なく奪い去っていくこの瞬間の
恐怖に至るまでの圧倒的な情報量を見事に言い表し、
捌ききった素晴らしい一文だなと思いました。



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posted by makomako972 at 08:52| 読書 | 更新情報をチェックする


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