2012年06月22日

本のショートレビュー集みたいなもの。

この頁ではさらさらっと読んだ本や、イデオロギーを含むなどセンシティブな内容である書籍群を、
中立性を損なわない範囲で纏めて感想記事として置かせていただいています。
この記事で紹介させていただく書籍は

MOTHER          久美沙織
ほぼ日刊イトイ新聞の本   糸井重里
夏の庭           湯本香樹実
博士の愛した数式      小川洋子
蒼い時           山口百恵
死者の奢り 飼育      大江健三郎
学問のすすめ        福沢諭吉
蟹工船           小林多喜二


の十冊です。


MOTHER  久美沙織



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言わずと知れた超メガヒットタイトルの小説版です。
言うまでもないことですが、原作ゲームはプレイ済みです。 
それも三周はしてますでしょうか。  原作は勿論糸井重里さんですが、
同小説はDQシリーズのノベライズでも知られる久美沙織さんです。
同氏が書き下ろしたDQ5のノベライズ全三巻は完読済みで、
その際の印象は同タイトルの壮大な世界観を余すこと無く表現し切ることに
奏功しているということで、ゲーム内の限られたテキストの行間を的確に見出し
想像力豊にあの世界の事象が描かれているということでした。
今作ではそんな精度を維持しつつも、登場人物の年齢に合わせたライトな
文章となっており、児童文学や絵本のような幻想性が終始に渡り支配し続けています。

その中でもとりわけ印象的だったのが、小説全体がアナの視点から
描かれているということで、出会いの場面から、あの年代の少女ならでは純真さや
時にふとした際に出る残酷さをリアルに生み出しており、そういった視点から
自分勝手だったり、臆病だったりする男の子たちを瑞々しい文体とともに
表現しているので特にアナの可愛さみたいなものが強い印象として残る作品です。

唯一惜しかったのが終盤にかけてキャラクターたちが些か暴走気味に
なっているところですが、糸井さんの事務所側から、「好きな様に書いて下さい」 
と言われて書いたものだということなので
或いはああった手法もアリなのかもしれませんが。



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ほぼ日刊イトイ新聞の本  糸井重里



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所ジョージさんと並んで、
私的に好きなタレントさんが糸井重里さんです。
彼の魅力は数えきれないように思うのですが、その中でも際立って
僕を惹きつけるのが、コピーライターとして、ゲームクリエイターとして、
そして本書で示されるネットビシネスのクリエイターとして、
この全く異なる業種全てで一級の成果を残されているということです。
コピーライターとしては言わずもがな、この言葉を世に知らしめ、
今なおスタジオジブリ作品の殆んど全てのキャッチコピーを考案されたのは
糸井さんであり、更にゲームクリエイターとしては”エイプ”という
会社を起ち上げ、ゲーム史に残る傑作であるMOTHERシリーズを世に送り出しました。
その後は愛あるゲームファンたちから 「埋蔵金よりMOTHER3だろ!!」
と揶揄されながら 「徳川埋蔵金発掘」 の企画でテレビで大いに活躍なされ、
ついに49歳になった糸井さんはその時初めて手にしたMacを通じて
ネットの可能性に高い関心と喜びを感じ、その後、現在に至るまでに運営される
”ほぼ日刊イトイ新聞”を開設し、2014年には広告収入に殆んど依存せず、
物販などを通じて年間売上高が30億円に達するという
国内屈指の怪物サイトにまで成長させました。
本書にはその経緯が、一般的な啓発本やビジネス書のように押し付けがましく
書かれておらず、あくまで読者の心理に寄り添いながら”ほぼ日”テイストで
書かれており、商用サイトのみならず、個人サイトにおいても活用できる
サイト運営の哲学が数多く内包されている興味深い一冊です。

そして、ここに書かれている運営哲学と
全く逆のことをやってしまっている最悪の例がこのサイトです(笑)


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夏の庭  湯本香樹実



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世界各国でも翻訳出版され、映画や舞台にもなった児童文学の名作で、
Amazonのカスタマーレビューでも相当数の数字をもつ一作です。

別の記事で紹介させて頂いた、梨木香歩さんの 「西の魔女が死んだ」 と同様に、
老人と子供の邂逅が齎す悲しくも美しく、そして尊い物語で、
「人間と社会」 という世界から抜け出し、
自然の美しさや摂理を説く描写が象徴的に見られます。
近代は少子高齢化の影響で、老人と子供の関係を題材とした日本の文学は
芥川賞を受賞された羽田圭介さんの 「スクラップ・アンド・ビルド」 のように
家族間の介護という接続ツールで結ばれ、
写実主義的なアプローチで描かれることが多いような印象ですが、
児童文学のジャンルとして双方の関係に幻想性を付与しつつ、
上述の体をなす近代日本の社会事情を描いた
という意味で意義のある作品だと思っています。

そういった意味で本作は、小川洋子さんの「博士の愛した数式」、
更に冒頭で挙げさせて頂いた「西の魔女が死んだ」 を加え、この三作には、
老人と子供の織りなす重厚な美しさ…という共通した魅力が伺えます。


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博士の愛した数式  小川洋子



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というわけでこちらも有名な一作です。
小説本体の知名度も相当なものですが、寺尾聰さんと深津絵里さんの共演で
制作された映画で更に知名度を上げ、人気を不動のものとした傑作です。

数学と文学という相反する学問や文化が、「友愛数」という印象的な
数字の概念で示される通り終始二人三脚のように一部の隙のない
組み合わせて折り重なり、まさしく友愛という
叙情をもって進行していく様子が印象的です。
同じように理数的な概念を文学を
大きく投影した作品の例として私的に思い起こすのが、
世界のSF史であまりに有名なトム・ゴドウィンの 「冷たい方程式」 です。
一人分しか輸送できないロケットに紛れ込んだ女性を、
複雑な理数が支配する冷たい宇宙の方程式によって死へと誘うという設定なのですが、
本来このような作品にも見られるように、理数的な概念とは文学で表現すると、
それらは不変であり、また絶対であるが故に、時として冷酷な印象を
与えてしまうため、文学の持つ体温との差異をどのように処理するか
というのが一つのファクターとなってきます。
前述のゴドウィンの一作はその温度差を文学的な概念として逆手に取って
成功させた貴重な短編ですが、この小川洋子さんの 「博士の愛した数式」 では、
文学それも児童文学のような人肌の体温を要求する親しみやすい
文章で構成されながらも、博士という奥行きのある人格像を投影することで
本来は文学にとっては冷たすぎる数学という概念に
鮮やかな熱を与えることに悉く成功しています。
それ以外にも様々な魅力にあふれる一作ですが、
文学と数学の温度を伴った友愛を成し遂げたという一事を持ってしても、
この作品が傑作たる証左であると私的には思っています。


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蒼い時  山口百恵



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読了後、かなり衝撃を受けた一作です。
山口百恵さんは伝説として語られる歌手であることは存じ上げていましたが、
この自伝を拝見してそれが全く誇張表現でないことがまざまざと伝わってきます。
彼女に巻き起こる全ての良いこと、悪いこと、悲しいこと、嬉しいこと、
それら悲喜交交に彼女は、あの若さで勇猛果敢に真正面から悉く立ち向かっており、
端々に至るまで徹底したプロ意識で責任を負い続けています。
僕はこの本を読んで山口さんはひたすらに
"本物" なのだということをとにかく強く感じました。
歌手として、アイドルとして、人間として彼女にはイミテーションが存在せず、
事務所の意向や自分の野心のために、時として偽りの表現を行う同業者たちとは
一線を画すその精神から生み出される文面、歌声には本物としての清々しさが
一点の曇りもなく伝わってきます。
自伝としては別の記事で紹介させて頂いた矢沢永吉さんの 「成り上がり」
も衝撃的でしたが、この山口さんの自伝にはアプローチは全く異なるものの、
もはや信じる事柄を追い続けることは当たり前で
尚且つその過程で生まれた全てに真っ向から責任を負う…
という人格には共通する信念と美学を感じます。
しかし男性的な荒々しさと大胆さが際立つ矢沢さんの自伝とは異なり、
山口さんのこの自伝には 「女性として生まれ、生きることへの誇り」
が余すこと無く記されており、読んでいてドキッとするような描写も含め、
人間、歌手としてだけでなく強い女性としての哲学には
尊敬の念が沸き起こります。 僕は男ですが。


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死者の奢り 飼育  大江健三郎



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「実存は本質に先立つ」 というサルトルの言葉でも有名な実存主義を、
敷衍した作品群として高く評価され、芥川賞受賞に至った短編集です。
「死者の奢り」 では、主人公の大学生、
そして同じ作業を行うもう一人の女生徒にみられる
諦観の念、とりわけ太宰治が自身の作品である「御伽草子」の中で示した
”聖諦”のような究極的な諦めの感情が印象的です。
作品全体を支配し続ける浴槽から浴槽への死体の運搬作業も事務上の手違いから
全くの徒労であったという叙情からはヘミングウェイの代表作 「老人と海」
などにも見られる「思想を内包した文学」の姿が伺えます。
ヘミングウェイの代表作、「老人と海」の翻訳を行った
京都産業大学教授福田恆存氏は精力の濫費とも言える登場人物の
自然主義的な振る舞いが齎す悲惨な結末を
「徒労のエンターテインメント」という言葉で表現しており、
サリンジャーの作品群など、米のビート・ジェネレーションから
ロスト・ジェネレーション世代の作家にこのような作品の
性質が伺えますが、それらの主人公たちと本作の青年たちが異なるのは、
前述の”聖諦”という概念に支配されているということで、
彼らは自らの洞察力によって推察による結果に翻弄され、
身動きができなくなる…というよりは身動きの意味や価値を失うという実存主義の影として
普遍的に指摘されるペシミズムが伺え、興味深い差があるなと私的に感じました。

「飼育」では生々しい黒人の描写が徹底的に日本文学特有の粘着的な文章によって描かれているさまが
素晴らしく、このような概念のアプローチは著名な外国の文学ではあまり見かけない上に、
全体を覆う文章の生々しさも、日本独特の文学的な叙情性を遺憾なく発揮している一作です。


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学問のすすめ  福沢諭吉



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「一身独立して一国独立す」

の金言で有名な明治啓蒙家の旗手、福沢諭吉の代表作です。
新渡戸稲造の 「武士道」 と同様、この時代の日本に数多存在した
思想や習慣、学識などが当時の先進各国の社会と比較研究され、
その冷静で豊かな見識によって種々の事柄が篩に掛けられています。
取り分け印象的だったのが、学問、生活、そして男女の社会構造に至るまで、
理想主義の形をまといかなりの力強さと
押しの強さで書かれていることで、そういった意味では
純度の高い啓蒙文学といえるかもしれませんが、この啓蒙の名声が現代に至るまで
損なわれていないことからするに、当時の明治人たちはこれを相当支持した筈であり
そういった意味では当時の国民の志の高さを感じるところではありますでしょうか。
戦後、「堕落論」 で坂口安吾が過度の主義主張によって歪められた国民観を、
堕落し一から出直すことを啓蒙して、国民から支持されたことを考えるとエライ差です。
その後、明治時代の先進各国に追い付け追い越せという嘗ての思想が
城山三郎氏の代表作「官僚たちの夏」などで見られるように、
戦後の高度成長という形で再び姿を表し、更に悲惨なバブル崩壊を経て、
再び終戦直後に安吾が 「堕落論」 で提示した過度の主義主張を
排斥し、嘗ての欲を持たず、あるがままに生きる 「さとり世代」 が誕生する。
僕はこの本を読んで、この国の人間というものは、
嘗て石破茂氏が石原慎太郎氏とテレビで対談した際に言った、
「極端に、端から端に思想が振り子のように動く気質がある…」
という言葉の生き写しなのかもしれないな…と感じた次第です。

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蟹工船  小林多喜二



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プロレタリア文学というものを文学の観点からのみで、
一切のイデオロギーやプロパガンダを排して
考察するのは、邪推ばかりがよぎる僕としては中々に
容易なことではありませんが、一つの古典文学のとして
見た場合に於いて本書の完成度は
実に素晴らしいものがあると思っている次第でして、
冒頭からかなりの文章を使用して労働者が乗船している
博愛丸の描写がなされてますが、これが筆舌に尽くしがたいほどリアルで、
如何に労働者が寝食を行う「糞壷」と呼ばれる空間が
劣悪極まる不衛生な空間であったかが、まるで読んでいる自分の鼻孔を
悪臭が突くような心持ちにさせられるほど如実に伝わってきます。
甲板に上がると、人の訪れを拒絶するかのようなオホーツクの凍て付くブリザードが、
凍傷で手先が棍棒のように感覚を失わせ、眼を開けてすらいられないほど頑なに
彼等を虐げた様子がこれまた皮膚感覚で感じられるほどでした。

しかし最も彼等「プロレタリアート」を虐げるのは浅川と名乗る監督官であり、
人を人とも思わぬ傍若無人ぶりは真に
邪知暴虐といった風采であり、徹底して怜悧狡猾です。
こういった誠に四面楚歌な修羅場に於いて、
乗員である彼等は己の唯々諾々の姿勢に遂には嫌気が差し、
ストを試みるというのは寧ろ、
基本的人権の観点からすれば不自然さが無い振る舞いのように思えます。

遂には監督官に一矢報い、労働者達が己の自由と権利の獲得を大いに慶賀しますが、
直ちに姿を現した海軍の駆逐艦から取り締まりの為に
今正しく博愛丸に接船せんとやってくる三艘汽艇を駆る水兵達の姿に、
それまで敬愛した帝国軍隊の真意を見知ったときの彼等には、、、様々な事柄を考えさせられます。
「色」の変化は実態の変化を伴っていない「空」。
朝三暮四や色即是空と定義するには短慮、辛辣に過ぎるのかもしれませんが、
一種の虚無感を感じたというのは正直なところではあります。

著者の虐殺死やその他様々な論議や物議があるこの「蟹工船」ですが、一文学として力強い作品である
という印象を受け、昭和四年に発表された本作が八十年以上未来を生きる多くの若者に
高い影響力を持つというのも、ある種その証左といったところでしょうか。


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posted by makomako972 at 17:46| 読書 | 更新情報をチェックする


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