2011年01月31日

グラースサーガ  J.Dサリンジャー

サリンジャーは91歳の長寿でしたが、
生前の大半を隠者として生きたので、
残した著作は大きく分けてキャッチャーインザライとグラースサーガ、
つまりこの

「フラニーとゾーイー」
「大工よ、天井の梁を高く上げよ シーモア序章」
「ナイン・ストーリーズ」


3部作に分かれます。(ナイン・ストーリーズは一部)


グラースサーガ


シーモアの人格。サリンジャーと戦争。



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サーガ最大の力点はシーモア。
彼さえ押さえておけば全体を
明瞭に理解できる構造になっており
別作「キャッチャーインザライ」の
主人公ホールデンの人物理解の
助力ともなります。
シーモアはそれほど重要な人物です。
それは娘のM・A・サリンジャーが
著書「我が父サリンジャー」に於いて
「最も愛した創造物であるシーモアを、
父は既に死んでいる
というかたちで紹介するしかなかった」

と回想していることからも解ります。



サリンジャーは第二次大戦中、
第四師団の一員としてドイツ最前線で
数多の激烈極める戦場を経験し、
44年のノルマンディー作戦にも
激戦地「ユタ・ビーチ」で対敵諜報作戦に
従事し、後に精神に異常をきたし、
様々な文献などの具体的証拠を
参照するにPTSDを患っていたようです。

「戦争からの帰還、そして精神衰弱」
というシーモアのアイデンティティは
作者の戦歴と密接に関係しています。



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「武器よさらば」で自身の戦争観を
戦場という直接的な形で体言化した
同国の作家ヘミングウェイとは異なり、
サリンジャーは日常生活という間接で
自らの戦争観を体現しているという
個性の相違は興味深いですね。





フラニーとゾーイー



・末妹フラニー


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村上訳もありますが、これは野崎訳。 
フラニーの稚拙な自己陶酔を「椿姫病」
つまりマルグリット・ゴーチエきどり
だと称するゾーイーは、レーンを
「偉大なカラッポ」と切り捨てます。
そんなレーンにフラニーが
惹かれた背景には、彼が
世界各国の文学を自らが誇示する
アカデミズムのもとに断罪し、
「真に価値ある人格はいないのか」
と宣う気取り気と、彼女が作中で言う
真に尊敬できる人物を訴求する…
という願望とがシンパシーを起し
それが思春期独特の精神的な脆さも
手伝って「恋人」 という関係として
刹那的に結実したものに過ぎません。
よって二人の関係は極めて自閉的であり、
発展性も愛もなく一過性です。



・末弟ゾーイー


万物全ての事象を形式化された儀式に変え、
無意味にしてしまうというゾーイーの
アカデミズム批判は極めて重要な点です。

例えば現代で言えばテーブルマナー。
私的には合理性を追求したとは思えず、
和気藹々とした愉快な食事と
引き換えに形式上の緊張と非効率を
伴うように感じられるこの儀式の裏には、
この儀式を制定し、追随する人たちの
「私は上流階級で、ただ食べるだけではない」
という虚栄心からくる自己顕示欲
が些か透いて見える気がします。
他人に迷惑をかけるのは論外としても
自由に気兼ねなく、家族や友達と愉快に
会話を楽しみながら取るものを
幸福な食事風景であると定義するなら、
この儀式なるものは、
僕にとって幸福を遠ざけるものです。
フォークの背にご飯…は未だに難解。


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文学でも、
この本を読む奴は全員〇○主義だ
などといった形式化のパッケージングに
よって作品自体の魅力が損なわれる
という現状が少なからず散見されます。
フラニーに椿姫病を煩わせた、この息苦しい
儀式が支配するそんな世界に対し、ゾーイーが
電話口でバディの人格を拝借し演説した
シーモアの名言、「太っちょのオバサマ」は
そんなフラニーだけでなく
読者にも感動を与えてくれます。





大工よ、屋根の梁を高く上げよ  シーモア序章



・大工よ、屋根の梁を高く上げよ


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シーモアは近しい人物からは常に
絶大な信頼と信仰を恣に受けていた
にも関わらず、大衆は著名人であった
彼の本質を理解しようとせず、
表層的な理解で、彼は非人格者、
精神異常者であると
結論づける…その軽薄さの中に
作者が訴える厭世主義的思想が
色濃く感じられます。

結婚式を当人ではなく
出席者のバティの視点を使役
して描くことで本書に全く登場しない
シーモアの存在感が異様に際立って
見える様子が何ともミステリアスで
興味深いです。


・シーモア序章


CHOPIN本作もバディの回想録で、
僕が今まで読んだ本の中で
最も難読だった部類に入る作品です。
作為的に極めて難解な文章構成に
しており、作者が愛するシーモア
という人物の全容が容易には
見通せないよう仕向けてあります。

なので本作の中から本質的、核心的な
描写を読み取ろうとするよりも、
「極めて難読である」という事
それ自体が作品の本質や核心であると
私的には解釈しています。

同時に、読んで思うのは
この鬼才の執筆能力を以てしても、
彼の膨大な思想の全てを文章で
書くのは無理では…という事です。
例えばショパンが言葉を用いず、
自身の思想の全てをピアノという
一種の楽器だけで全て表現する
ことに奏功したように、シーモア
という人格の究極を体現するため
には言葉以外の何か別の表現媒体が
必要なのでは…ということを思う次第です。


ナイン・ストーリーズ


・バナナフィッシュにうってつけの日


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「大工」の章でも書いたことですが、
シーモアは自らが語ることなく、その
全てがグラース家の兄弟たちの回想録、
という形式で出現するのに対し
本作は唯一の例外として本人が登場します。
「シーモア序章」 で提示される難読とは
異なり、本作の情報密度は極限まで縮小され、
その小ささ故の難解さを持つ一作でもあります。

旅行直前を描いた 「大工」 では、
死の直接的な兆候は無く、唯一、終盤で
シーモアの幸福病が突如消失したとする
描写が挙げられますが、それを死因
とするには極めて脆弱です。
やはり一部の研究者の指摘通り、
シビルの土踏まずへの接吻は、彼の
現世への賛美と感謝の念であり、
全てを役割と幸福を享受したシーモアは、
肉体を捨てて次の次元に移行しようとした
と考察するのが最も一貫性があり自然です。
もし彼を死因を悲愴に求めるなら、
シビルとの会話や作者自身の長寿、
兄弟たちによって語られるシーモア自身の
ポリアンナシンドローム的な
幸福主義と乖離するからです。




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