2012年11月19日

変身  Franz Kafka

一も二もなくディストピア文学というものが大好きな僕のお気に入りの一作。
フランツ・カフカ 「変身」の話でも書きたいと思います。

カフカの変身


「フランツ・カフカの作品は、思想の骨組みのようなものであり、時には現実にありえない奇怪なものもあるが、
 その奇怪な筋が末端の真実さと巧妙に結びついている。
 その末端的リアリズムによって彼の作品は人を動かし、彼の思想に現実的な印象を与えている。
 そういう意味で、作家にとっては現実感なしには思想というものは存在しないのである。」


伊藤整氏は著書 「小説の書き方」 の中でカフカの作品をこう評しています。
これはこの世界的傑作の本質を見事に射抜いた一文です。
彼が「時には現実にありえない奇怪なもの」として挙げている作品が、恐らくこの「変身」であると
考えてよさそうですが、何れにしても上記の一文が決してただの憶測ではないことは
自分自身の表現形態の一つとして本作を用いてきた多くの考察が示しています。
ここではその幾つかを列挙してみたいと思います。


石原慎太郎著 「再生」に於ける毒虫。



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石原慎太郎氏が障害者の内なる感情を生々しく描いたノンフィクション
「再生」 の作中に於いても盲聾者である主人公は
自らの感情をこの『変身』を用いて語っています。

「そんな頃、友人の崎山に勧められ彼が読んだばかりのカフカの『変身』を読んだ。
 あれは私にとってある種のショックでした。
 人間の想像力が書き出した小説なるものが、ここまで他人の、
 私というカフカとは全く違う者の人生にいきなり触れてこれるものなのかと思いました。
 それはただの関心なんぞではなしに、この私こそがこの奇妙な小説を理解、
 などではなしにその内側の内側にまで入って体得できるのだと思いました。
 あれは奇妙な倒錯だった。
 私を全く知るはずのない他人が誰でもないこの私自身のことを書いている、
 書ききっている、そうか、
 この俺の今在るあり様というのはまさにこういうことだったのか、
 誰がどんな同情、どんな理解をかざして何をいってくれようと
 俺は虫なんだ。奇妙な虫ということなんだなと。」 ━第四十五頁


この表現は普遍的な言葉を百も千も並べて説明するよりも、
痛烈に読者に自らの心情を投影させることに成功しているといえます。



伊集院光氏の過去体験に於ける毒虫。



更にEテレで放送されている 「100分で名著」 にレギュラー出演し、
番組中でカフカの「変身」の内容を聞かされたタレント伊集院光さんは、
不登校児だった自身の少年期の感覚を踏まえて収録当時の感想を後にご自身のラジオで、

「登校拒否をはじめた一日目から三日目までの楽しさ、学校に行かなくていい楽しさと、
 このまま俺どうなるんだろうっていう不安と、
 窓から見える同級生の誘いに来たカワノ君の姿みたいなことが(作中のザムザと重なって)
 野郎見てやがったなカフカ! 俺があんな大変だったときを。」


と語っておられ同時に、
家族の生活を支え、妹の将来を左右する立場にあった
「変身」の主人公グレゴールザムザの一連の悲劇を、

「ギブアップできない人にどんどん重圧が掛かっていったら、
最終的に身体に何か症状が現れるのとあまり変わらない…っていう解釈だ」


と語っておられます。
なるほど。 熟成した資本主義に支配される国の人々は、その大半が経済活動という生活の運命から
ギブアップすることができず、時として逃れようもない社会問題の重圧に晒され、
最終的に体に以上をきたすほどの局地に達した時、カフカの描き出した非現実世界の状況は、
ある意味では確かに戯画といえるのかもしれません。


本来、決してあり得ないはずのシンパシー



冒頭の伊藤整氏の考察を含め、上記の三者は文字通り三者三様の
感想を述べておられますがこれらの意見に共通して言えることは、

「この『変身』という小説は人が虫になるという
有り得ない設定の物語であるにも関わらず、その物語は読者の様々な
生活に密接にシンクロし、強烈なシンパシーを与えている。」


ということです。
僕の勝手な考えかもしれませんが、
この一点の事実こそがこの中編小説を世界的名作たらしめているのだと思います。
更にwikiによると、

『変身』の初版表紙絵は写実画家のオトマール・シュタルケが担当したが、
カフカは出版の際、版元のクルト・ヴォルフ社宛の手紙で
「昆虫そのものを描いてはいけない」
「遠くからでも姿を見せてはいけない」と注文をつけていた。


と記されています。これは非常に有名な話ですが、上記の考察通り
本作が読者の様々な生活に密接にシンクロし強烈なシンパシーを
与えることに重点を置いて書かれた作品だ…とカフカ自身が
考えていたなら「虫を絵で描く」という視覚的に答えを示す
手段は避けたいと考えるのは妥当と言えるのかもしれません。

因みにフランツ・カフカはプラハの裕福な家の出身であり、
多くの時間を父の行う事業の補佐的な役割に割き、
作家としてこの「変身」以外に「城」や「審判」などの名作を残したものの、
取り分け「変身」の執筆中は、午前中は役所勤め、
午後は父親の経営する工場の管理を任されていたので
小説の執筆に掛ける時間が少ない日々を事あるごとに嘆き、
これ以外にも様々な要因が重なり親子間の
軋轢はかなり深刻化していたといわれていますが、
今作の主人公グレーゴルも、父親の投げた林檎が原因で死に至った…
というのはそういった事実を連想させます。

メタモルフォーゼ…という童話的構成を用いながら、その一部始終は
隅々まで写実主義と自然主義が残酷なまでにすっかり支配しており、
変化したグレーゴル以外、世界の一切は全く変化せず、唯唯残酷に彼を
社会から排斥していく様子は、抗いようもない様々な社会の歪みを写実しています。





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posted by makomako972 at 20:37| 読書 | 更新情報をチェックする


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