2012年11月28日

「ベトナム観光公社」 「時をかける少女」  筒井康隆

さて、今回読んだのは筒井康隆先生のベトナム観光公社です。
父が大昔に筒井先生の作品に傾倒していたらしく、我が家の本棚には筒井作品が山のようにありますが、
僕自身は「時をかける少女」しか読んだことがない…という一知半解も甚だしい読者でしたので、
これではイカン、何か短編集でも読んでみようか…と思い立ったワケです。
「俗物図鑑」や「霊長類 南へ」なども興味深かったのですが、
何となく今回はタイトルだけ以前から聞いたことがあったこのベトナム観光公社を読むことに決定しました。

ベトナム観光公社

まず、強烈な諷刺描写が印象的な同タイトルの短編作品から。
以前太陽の季節のレビューに於いて、
戦中戦後生まれの作家の方々の多くには「戦う」という姿勢が前提としてお有りだ…
というような話を書かせて頂いたことがあったような気がしますが

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本作に於いても付和雷同する大衆意識に対する諷刺が数多く見られ、
形骸化したマスメディア等に対する批判や宗教に関する事にも触れており、
なんというか…イイ感じにささくれています(笑)
しかし、そこは筒井さん独特のスラップスティック・コメディ的要素を組み込むことで
キャッチーな雰囲気になっており
読んでいて間延びするとか肩が凝ってくる…というような事はありません。

さて、次に印象的だったのが「トラブル」でしょうか。
地球外生命体に自意識以外の全てを占領された人間同士がひたすら殺し合う
という内容ですが一種狂気的なグロテスクな描写が後半にかけて永遠と続き、
そういったものに耐性があまりない僕としては
「おいおい…すんげぇことになってんな…」と独り言をぶつぶつと
呟きながら読んでおりましたが節節に、小粋な描写が差し込まれており、
終盤テレビ関係者がどっと流れ込んでくる場面で

「警官たちが入ってきたのとは逆の側の入り口から、
またどっと大勢の人間が乱入してきた。
見るとどれも知った顔ばかりなので、おれはびっくりした。テレビ局の連中だ。
T・DにA・D、大道具の親爺やカメラマン、シナリオライターや動画家、
それに大勢のタレント――配役の関係で警官の格好をしたややこしい奴までいた。」


とか、

「どういうわけか救急車の運転手がサラリーマンに首を締められ、
助けを求めてしきりにクラクションをならしていた。求急車だ。」


なんて文章が出てきたら思わずゲラゲラ笑ってしまいます。

人称が主人公のテレビマンと侵略者の間で忙しなく転換するのも状況をリアルに描写するのに
一躍買っており、何とも警抜なシステムだと思います。

そして本短編集に於いて一番強烈だったのが「最高級有機質肥料」です。
この短編集の中ではこれが一番強烈だった…という心証は、
結構な数の方の同意を頂けるんじゃないかと思っているわけですが、
じゃあ実際にどこが強烈だったのか言ってご覧なさいよ!と追求されると
中々説明するのは難しいです。文章が難解であるとかそういったことは
一切無く誰でも簡単に読み解くことができるのですがそれ故に困難です(笑)
ラスト、気焔を吐くかのような現地宇宙民族の首相と外務大臣の怒濤の台詞を読んだ時には思わず

「これは酷い」

と声が漏れたほどです(笑)
人の排泄物を題材にして一作の短編を書けるってどう考えても正常な精神状態じゃないような気もしますが、
そんな人が「時をかける少女」のような、あれほどドラマチックで婉美な作品を書くわけですから…
もはや多才だとかそんな概念を通り過ごして意味が解りません。
しかしまあ…あれほど粘り強い描写で矢継ぎ早に説明された外交官の主人公や彼の前任者たちが、
帰星後に皆自閉症になるというのも大いにわかる話ではありますが、
出星前には目に入れても痛くない…というほどに心酔していた総裁の娘ミリが
お見舞いに来たラストのシーンに至っては、
最早主人公は彼女に対して微塵の魅力も感じなくなっていた…
というのはあまりに皮肉な話と言えるかもしれません。

何れにしてもいよいよ首相がお出ましになるか…という場面の直前、
丁度左ページのラストに文章が来がくるように

「ここでお断りしなくてはならないが、読者諸君の中で汚い話を聞くと
気分が悪くなる人はどうかここから先を読まないでいただきたい。(中略) 筆者のせめてもの良心である」


と丁寧に慫慂の旨が記載されているのがなんか面白い(笑)


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全体通じてこの短編集には付和雷同する大衆意識に対する諷刺
といものが数多く出てくるのが印象的でした。
専ら「ベトナム観光公社」で詳しく書かれていることですが、
「トラブル」の序盤の於いても丸の内のオフィスビルに出勤していく
サラリーマンたちが自分たちを睥睨してくる描写や、
彼等が独自のヒエラルキーを造り上げ、自分たちをその上層部に
配置しているという狭隘で怜悧狡猾ともいえる概念は、
集団や集団意識というものを先生が
当時どう考えていらっしゃったかがよくわかります。
「時をかける少女」の作中に於いても、主人公の和子はタイムリープする
能力を手に入れ、それを最後には自在に使いこなすことまでしてみせますが、
至って本人はその手に入れた能力を慶賀することもなく、寧ろそれが起因し
自分が学校の級友たちから稀有な目で見られ指弾されるのではないか…
という危惧を終始一貫して抱き続けている…というのも一種、
筒井先生の付和雷同する大衆意識に対するものの
捉え方が現れているのかなぁ…とも思いました。

「時をかける少女」やハインラインの「夏への扉」などのタイムトラベルを題材にした人間ドラマも
ドラマチックで素晴らしいですが、こういったゲテモノ(失礼)な小説も興味深いですね。


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posted by makomako972 at 17:03| 読書 | 更新情報をチェックする


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