2012年05月20日

秒速5センチメートル   新海誠

秒速の小説版を読むのはこれで何度目なのか正確に記憶していません。兎に角何度も読んでいるわけですが、
他の秀逸な文学作品同様、この作品もその都度、印象が千変万化するのでついつい年に一度くらいの頻度で再読してしまいます。
取り分け本作は全編通じてアニメーション版よりも、事情が詳細に描写がなされている事もあってかその分だけイイ意味で容赦がない印象があります。

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初めてアニメ版を拝見した時はまだ学生で、そのあまりのリアリズムに当時の自分は唯唯閉口するしかなく、
物語ラスト、貴樹が誰もいない踏切の向こう側を見つめて微笑むシーンから、
その時はまだ救いを見出すだけの洞察力がまだなかった事も相俟って、「なんて救われない物語なんだ…」と漠然と感じていたのを記憶しています。
単純に大団円で終わる作品には無い、こういった作品の内に秘められた独特の美しさを見出すことができるようなったのはそれから幾分時間が経ってからでした。
さて、そんな僕にとっては非常にお気に入りなこの「秒速」ですが、小説版もアニメ版と同様三編構成となります。



一章


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この章は基本的にアニメ版の内容にほぼ則す形で流れていきます。
貴樹と明里の二人の間に茫漠として立ちはだかる弊害を
“動かない電車”“転校”或いは細かい部分で言うなら
“二人の関係を冷やかす同級生”などを
用いて巧みに表現されており尚かつそれを乗り越えようと決意しつつも、
果たしてそのようなことが可能なのか…
という逃れようのない不安に駈られる貴樹の心情を軸足として物語が展開しています。
明里に対する本心を綴った手紙を、駅に吹きすさむ風に盗られてしまう
シーンは取り分け印象的で、この一事によって二人の未来が左右されたものと
認識したくなりがちでしたが小説版では

「僕たちの人生は嫌になるくらい膨大な出来事の集積であり、
あの手紙はその中でのたった一つの要素にすぎないからだ。
結局のところ、どのような強い想いも長い時間軸の中でゆっくりと変わっていくのだ。
手紙を渡せたにせよ、渡せなかったにせよ」


と、もしお互いが本心を披瀝し、
固い決意をもって前述の弊害を筆頭とする自分たちに降り掛かる様々な
“敵”に立ち向かおうともそれは結局のところ、それは自分たちの手に
負い得るものではなく、唯々諾々に支配されるしかなかったという
考察が示されていて、少し寂しい気持ちになりますね。


二章


二章ですよ、奥さん!
僕が三編中で最も好きなのが二章です。
因みにアニメ版では粘り強く描かれた美しい種子島の映像がとても魅力的で、
絵を見て物語の進行具合を読み解く事ができる分、
貴樹の台詞は至って必要最低限に抑えられています。このような見せ方をするメリットとしては、
片思いしている花苗視点からの物語を進行させる以上、
彼の心情を視聴者も彼女と一緒になってあれこれと推察できるというメリットがあるわけですが、
小説版では更にその演出に磨きがかかっており、貴樹の台詞はほぼ据え置き量ですが、
花苗の台詞と心理描写は増やされている分、アニメ版にも増して花苗が何だか不憫に思えます(笑)

二章終盤で花苗が無意識に貴樹のシャツの裾を掴んだとき、彼が言った

「――どうしたの?」

という一言で、勇んで告白しようと決意していた花苗が、自分と貴樹の距離感、
そして彼の本心を矢庭に諦観してしまい、口を噤むしかなかった…というのも何とも切ない話です。

終盤、花苗が、上京する貴樹を空港に迎えに来るというアニメに殆ど描かれないシーンが出てきますが、
そこでいった彼女の一言は更に切なさ爆発で心に沁みます。
因みにアニメ版ではここのシーンが三章の終わりに一瞬だけ(一秒くらい?)登場します。
貴樹の乗る飛行機が島の滑走路から離陸する姿を、空港の敷地を仕切るフェンスにしがみつき、
悲痛の表情で見送る花苗……という構図なのですが、
小説版のこのエピソード読後に改めてアニメ版でこのシーンを見ると……もう花苗が…可哀相で可哀相で…(泣)


三章


この章が最もアニメと情報量が違う章です。
如何に明里の後ろ姿を追い続けた結果であったとはいえ、二章で花苗の無垢で可憐な乙女心を散々弄んだ貴樹に報いの時が訪れます(笑)
複数の恋愛を悲惨な末路で終えていく過程と、社会との辛辣な距離感が、無気力な生活を媒体として生々しく書かれており、
未だに彼が明里と過ごした冬の一日の甘美な一時を忘れることができず、
同時にあの時二人の弊害となった社会が今も彼の大きな障害となって立ちはだかっている様子が重厚且つ精緻に描かれています。
既にその両者を乗り越え別の人と結婚した明里は、貴樹と対比的に描かれていて、何だかこれはこれでまた切ないというか…悲しいというか…凹むというか…
新海先生が「秒速5センチメートル」を公開したとき、結構そういったファンの方のご意見があったというのも頷けますね。

いや~、新海先生の作品はどれも好きですが、この秒速5センチメートルは特に好きな一作です。


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(wikipedia)  新海誠      (公式HP)  新海誠

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劇場版 言の葉の庭 & 秒速5センチメートル 予告編。
 


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posted by makomako972 at 05:23| 読書 | 更新情報をチェックする


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