2013年10月15日

フェラーリと鉄瓶   奥山清行

デザイナー…というのは僕にとって揺るぎない畏敬と憧憬の対象です。
奥山氏ほどの方になるとそれはもう神様を見るような…という表現を使用しても過言とは申せぬほどです。


フェラーリと鉄瓶

因みに今回のレビューも一応のところ推敲めいたことは行っているものの、恣意的にガリガリと書いているため散漫な文章ですが、
まあそれは毎度のことなんで勘弁して下さい。

デザインの持つ影響力。


ドゥカティさて、デザインという分野に於いて巨腕の才が惜しみなく
注がれ世に産出された作品というのは、
悉にエンスージアスト達に称賛され、
或いは数多の喝采を得るというのが世の常でして、
製造しているメーカーやブランドにとってそれは如何にも心強く、
また全幅の信頼をその製品に寄せる傾向があります。
しかし、一度その作品が "フルモデルチェンジ" という
分水嶺に差し掛かった時、それまでの様相は一変し、
あれほど自分たちを支えたそれらの作品たちが、
反旗を翻すかのように大きな重圧となってくる事があります。
ドゥカティ社は九十年代中期、ビモータ社を創業した
奇才マッシモ・タンブリーニによって生み出された
916というスーパーバイクがその鮮烈なデザインで忽ち好評を博し、
同社の代名詞ともいえるモデルへと一気に上りつめました。
その後この傑作は996、998と順風に帆を掲げ、脈々と進化を続け、
十年の長きに渡り世界の一線で戦うドゥカティ社を支えます。
しかし問題はその後に起こりました。
というのも、あれほど好評だったSBシリーズも
同社最高の運動性能をもつシリーズとしては
避けては通れぬFMCの岐路に立たされたわけです。
タンブリーニ不在のドゥカティ社は気鋭の天才デザイナー、
ピエール・テルブランチにその役目を任せ、
満を持して誕生したのがご存じ写真右の999。
因みに僕が初めてこの999をカタログで見たときは、
そのデザインに瞬間的に魅了されましたが、
今考えても発表された時の世界の評価は
露骨に辛辣だったように思います。
それから暫くして僕はこの999のラインナップの中でも
生産台数が非常に少ないコンペティツォーネエディションである
999Rの実車を偶然最寄りのバイク屋で見る僥倖に恵まれました。
その時改めて“このバイクのデザインは美しい。
なのに斯様な憂き目に曝された要因は一つしか考えられない。916だ”
と強く思ったのを今も鮮明に覚えています。
僕が所有しているSS900IEは、
そのピエール・テルブランチがデザインしたバイクなのですが、
こちらもやはり何度見ても美しいデザインだなと思うし、
見ていて飽きないという印象は購入契約した日から然程変わりません。
先日アップしたPSG-1の記事で書いた納車直後の印象とは二律背反するようですが、
まあ基本的には気に入って乗っているんです 笑)
同時にそれだけ過去の傑作というのは高い影響力を持つのだなとその時知ったわけです。



奥山氏のデザインした車。



前置きが長くなってしまいましたが、
ピニンファリーナでデザインディレクターを勤めた奥山氏は、
五世代目クアトロポルテそんな巨腕の才が生み出した数々の伝統あるモデルを幾つも刷新し
高い評価を得ている点が取り分け印象的なデザイナーです。
因みに私事で恐縮ですが、氏の作品で最も気に入っているのが
五世代目クアトロポルテで、同車の四代目は誰もが知る
天才カーデザイナーであるマルチェロ・ガンディーニであり、
その四代目クアトロポルテは世界中で長きに渡り愛されるマセラティ社の
看板モデルだったわけですが、満を持して公開された五代目は、
その評価を覆すことなく同社の成長を支える重要なモデルとなりました。
スカリエッティも456Mをデザインした奥山氏が、
FR 2+2の完成形としてデザインした素晴らしい作品ですし、
599も575から更にデザイン面から現代的に進化したモデルです。

何より288から脈々と続くフェラーリ社のスペチアーレが背負っている伝統の奥深さに
関しては最早この場で記すまでもないので省略しますが、兎に角そういった
奥山氏がデザインした作品はエレガントで何より美しい…というのが私的な印象です。


本書で敷衍、慫慂するデザイン哲学。


エンツォフェラーリそういったマスターピースの数々を
世に送り出してきた奥山氏の著した本書には
その証左ともいえる印象的なデザイン哲学が数多く散見されますが、
その中でも「デザインとは総合的なものである」
…という哲学は取り分け興味深かったです。
僕は今現在、家具製造販売する事業を運営しているのですが、、
始める前は直接的に生産性とは縁のない仕事に従事していたことも相俟ってか、
いざスタートさせてみると、至る分野で
認識の甘さというものを痛感する事がありました。
今思えば結局のところ、当時の認識甘さとは社会の常識との
齟齬であり、それは少し傲慢な言い方ですが「デザインに対する認識の甘さ」
という表現に言い換えると当を得たものになるように思います。
ツメが甘いという意味では今も改善しなければならない点は多くがありますが、
開業した当時は
「デザインってカッコイイものや可愛らしいものを要は考えればいいんでしょ?」
と頭のどこかで太平楽に考えていました。
当然このような認識が世間で通用するはずもなく、
実際やってみるとデザインとはペルソナなどを代表例とした多種多様の手法によって
導き出された明確な製品の使用用途の設定や、使用者の環境の想定、
599更には販売価格から適切な利益を差し引いた原価の範囲内で
ディテールや規模を設計しなければならないという問題だけでなく
何より安全性の確保なども十分に考慮して作らなければならないということを、
体裁だけでなく本当の意味で認識しなければならないことに気付きました。
同時に本書中で奥山氏が述べておられる通り、
最終的にはそれらの製品群をどのようなアプローチ、
或いはテーマ等を掲げて販売していくかという販売戦略まで一貫してその全てが、
"デザイン" という一言に内包されているのだという事も知り、
デザインという概念が如何に奥深く、
また製造の根幹を担っているものなのかを改めて考えるにつけ、
この分野に於ける専門家の占める位置というのは企業内で非常に大きく、
また大きいものであるべきなのだなと感じる次第です。

写真右は奥山氏がデザインしたフェラーリ599とスペチアーレ "エンツォフェラーリ"


330P4の美しさと、フェラーリが売れるワケ



330P4これらの事実を加味して自らの内にある美意識の基準を
変化させようと意識しはじめてから、世の中の製品の見え方も
多少ではありますが変化したように思います。
例えば僕は他人から「この世の中で最も美しいと思う車はなんですか?」
と尋ねられたとき「330P4が好きです」と答えるのも
こういった経験に起因していたりします。
あの車は単に美しいものを作ろうというだけの目的下で
製作されたわけでなく、レーシングカーとして当時考え得る最高水準の
空気力学を駆使し設計され、高いcd値を与えられた個体であるだけでなく、
“何より勝利するため”という明確なポリシーのもと搭載された
V60°チェーン駆動のDOHC12気筒の大型エンジンは、
マウントされたリアに美しい機能美溢れる
曲線を生み出す事に大きく寄与しています。
そして何よりそういった機能美の結晶体が、
デイトナ24時間レース1,2,3フィニッシュを決めるという
明確で輝かしいリザルトを残していることも含め、
総合的な観点からこの車の美しさに魅力を感じています。

本書の第五章、「なぜフェラーリは高くても売れるのか」の末尾で奥山氏はフェラーリについて、

フェラーリの赤は、決してワインやポモドーロの赤ではなく、
今まで亡くなったテストドライバーやF1レーサー、
そして若くして亡くなったエンツォ・フェラーリの息子ディーノ、そういう人たちの血の色なのです。
ぼくはここに人とモノとの「敬意を持った関係」を感じざるを得ません。(151項)


と記しておられ、フェラーリ社が如何に車作りに孜孜として取り組んでいるか、そしてなぜ美しいのか…
と言うことがこの章の奥山氏の分析からも伺い知ることができ、
延いては本書のテーマ「価値あるものづくり」の神髄を垣間見ることができる非常に勉強になった一冊でもあります。


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posted by makomako972 at 22:23| 読書 | 更新情報をチェックする


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