2014年03月24日

ティファニーで朝食を  トルーマン・カポーティ

村上春樹氏が翻訳を行った米文学作品としてはF.スコット.フィッツジェラルドの「グレートギャツビー」、
J.D.サリンジャーの「キャッチャーインザライ」に続いて本作が三作目のレビューとなります。
取り分け今回は翻訳の話、それにヒロインであるホリー・ゴライトリーの人格についての話などを書かせていただきたいと思います。

ティファニーで朝食を


ギャツビーで確信した村上春樹氏の高い翻訳力。


グレート・ギャツビー

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村上氏自身は予てより様々な書籍媒体などを通じて
「グレート・ギャツビー」が自身にとって
最も強い影響を受けたと文学作品であると再三再四語っておられ、
結果的にこの事実は今日に於いてハルキストのみならず、
一般の方にも広く知られるところとなっているわけですが、
その彼が満を持して2006年に発表した同作の翻訳はあまりに品質が高く、
ウェブサイトのレビューなどを拝見していても
他の追随を許さないほど評価も良好なものです。

「ギャツビー読むなら村上訳。」

というのが専らの通説のようになっているのかな…と感じるほど
現在は一種スタンダードな存在となっているような印象を受けます。
そんな各所の評価の内容を子細に閲してみると、
やはり多くの方が評価に値するとして挙げておられる理由が
「翻訳の正確さ」という部分に帰結している印象も同時に受け、
例えば日本語が堪能なアメリカ出身の文学者や文学研究者の間でも
概ね同様の評を下す方が多いようですし、
逆に英語が非常に堪能な日本人の読書家も
「フィッツジェラルドは日本人なのか」という印象を抱くほど、
作品の抒情や叙景を見事に表現している。と評します。

アルジャーノンに花束を

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秀逸な翻訳によって作品がより光り輝く…
というこのような現象について考えるとき私的に思い起こされるのが、
同じくアメリカ文学作品で小尾芙佐氏が行ったダニエル・キイスの歴史的傑作
「アルジャーノンに花束を」の訳本です。
小尾氏は、物語序盤のチャーリィの知能レベルを表現するため、
原文に於いて用いられた単語のミススペルの意図的活用という
技巧的表現を翻訳する際、平仮名だけの文章や、句読点を殆ど使用せずに
書くという手段を用いることで、
生々しくも無垢に描くことで高い評価を得たわけですが、
村上氏が以前に訳したサリンジャーの「キャッチャーインザライ」も、
遥か昔に野崎孝氏がコロキアルを巧みに用いて翻訳することで、
当時のアメリカにいた若者の言葉遣いを巧みに表現するだけでなく、
ホールデンの荒唐無稽でありながらも
純粋無垢なパーソナリティーをドラマチックに描くことに成功し、
この野崎訳は現在に於いても
金字塔ともいえる秀逸な訳として広く語り継がれている点も両作は共通しています。
村上氏が行ったキャッチャーの翻訳は、
そんな野崎訳に比べると些か瑞々しさや青さのようなものは薄れてしまうものの、
歴史的文学作品としての正確さを体現するうえでは、
よりホールデンの心情を汲み取りやすい正確性の高い翻訳だと私的には感じております。
翻訳家、劇作家の重鎮として知られた福田恆存氏は、
シェイクスピア作品の翻訳作のあとがきに於いて翻訳の
重要性について書き記しておられましたが、私的にも国外文学を
読むときの翻訳の評価というのは非常に気になる重要なポイントです。


ユニオシとヒロイン、ホリーの人格形成。


キャッチャーインザライ

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さて、そういう意味では今回読んだ本書の翻訳も
同様に巷では概ね高い評価であるようなので、諸手を挙げて読み進めることができます。
取り分け本作品で非常にフォーカスされやすいポイントとしてしばしば”ユニオシ”
という人物の人種差別的表現が挙げられるようでして、
発表されてから半世紀以上が経過した近年に於いても
大きな物議を醸しだす作品であります。
オードリーが演じた1961年の同名の映画作品も良くも悪くも
注目される作品で、”ユニオシ”に見られるような影響を
この映画でも色濃く受け継いでいるせいか、
レイシズムを語る上ではよく引用されている印象があります。
日本人のわたくしとしては
「あー…まぁ言われてみれば差別的表現なのかなぁ…っていうか全然気になんないけどね」
って感じでどこ吹く風状態です(笑)

そんなことよりも、
数多く存在する本作の魅力的なポイントの中でも最も煌びやか色彩を放つヒロイン、
ホリー・ゴライトリーの人格の話でもしたいと思います。
wikiには上記の村上訳二作と並んでこの作品も
「イノセンス」にフォーカスした作品として扱われていますが、
その影響を最も色濃く受けているのが彼女で、
なんとも自由奔放ながら憎めないキャラクターに仕上がっています。
古今東西、文学史を紐解けば、気の強い我儘娘が登場する作品は数多く存在し、
ヨーロッパ圏での代表的な作品で言えば、シェイクスピア初期の喜劇
じゃじゃ馬ならし

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「じゃじゃ馬ならし」 に登場するカタリーナなどがそれに該当するのでしょうか。
しかし、似通っているのはあくまで表層的な、ごくごく薄い皮相の性格の部分だけで、
一種洗脳のようなペトルーキオの振る舞いによって籠絡させられるカタリーナとは違い、
ホリーの意志や人格には明瞭な動機付けとなる思想や哲学があるので、
他人に何を言われようが、されようが終始揺らぎがありません。
彼女のパーソナリティーは一体どこから着想を得たもなのか…
と色々考えを巡らせてみたところ、マドンナか?とも一瞬思いましたが、
台頭してきた両者の時代があまりに符合しないため、
それならマリリンモンローか?と思い調べてみると、
カポーティはマリリンと親交があったらしく、ホリーの人格も彼女から
着想を得て生み出されたとされる…といような記述が出てきました。
因みに本書に添付されている村上氏のあとがきでは、
当時この作品が映画化されるに際してのキャスティングで、
ヘップバーンがホリーの役を演じることを聞かされたカポーティは
その事実に少なからず不快感を示した…という事実を書き記している…
という話だそうで、成程、これは前述のカポーティがマリリンに
着想を得てホリーの人格形成を行ったという記述の証左たる事実のように思われます。
確かにマリリンのように大衆のセックスシンボルとして
マテリアリズムを大いに感じさせるキャラクターに
見事に合致するホリーの人格的特徴は、上品で可憐、どこか儚げでありながらも
どこまでも素直で純真というアン女王をローマの休日で見事に演じ、
世界的スターになったヘップバーンの持つ雰囲気とは些か異なるようにも思えますね。


ホリーの自立した人格像が見せる特殊な魅力


何はともあれホリーのようなこの手の女性の魅力を見事に描き出すのはなかなか至難の業であり、
ある意味では曲芸ですらあるように思えます。
「ギャツビー」ではホリーに似たような位置づけのキャラとして
デイジー・ブキャナンという天真爛漫ですが軽薄で俗物的な美女が登場しますが、
僕自身は読中、彼女には全く魅力は感じませんでした(笑)
森鴎外

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スーパーで買い物中のマダムたちの井戸端会議風に言うなら
「あの娘、わたし嫌い!いつもジャラジャラとなにか小物をつけて、
見下すような目つきで人をギラギラみるんだもの」って感じでしょうか(←ワカラン)
鴎外の「舞姫」に登場する太田豊太郎の
逆バージョンみたいな認識です。(←余計にややこしい)
しかし、当のホリーを見てみると、彼女もわがままで好き勝手。
言いたいことは相手を慮って遠慮するということを知らず
無神経にずけずけ言うし、おまけにズボラで怠惰な性格。
一見して美人でスタイルが良いなどという外面的なチャームを除いたら
何一つ残らないようなキャラクターのようになってしまいかねない人物を、
カポーティは彼女が持つ異性や社会、
或は自分が飼っている猫に対してすら存在する明確で清々しいポリシーを、
彼女の力強い言葉を用いて表現させることで巧みに回避させており、
尚且つその人格に説得力と輝きを与えている「彼女の異質な過去の経験」は、
もはや”可愛いだけの女”という印象を読者に一切与えることがない…
という次元にまでもっていくことに成功しており、この技は見事だなと感じました。
だから針で刺すような無神経な言葉を何度言われようと周りの
登場人物も彼女を憎めない。彼女の幸せを願ってしまうわけで、
一度は捨てられたホリーの猫が幸せな生活を掴んだように、
彼女もまたそうであってほしいと思わせるとっておきの何かが彼女にはある気がします。



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