2014年05月02日

言の葉の庭  ノベライズ版 (ネタバレ注意)




2016年9月2日  最新作 「君の名は。」を観た感想とか。











人間は自分自身にとって都合の悪い事象や感情を巧みに嘯くような振る舞いができてしまうだけの
強いメンタリティというものが元来あって、
故にそれが周りに要らぬ心配を抱かせずに済んだり、
逆に「苦しいのは自分だけなのか…」という普遍的に聞かれる誤認識を他人に抱かせたりするのでしょうが、
今回この「言の葉の庭」の小説を読んで感じたことを極端に言うなら、
ここに登場する人間たちがそういった「人の強さで生み出した」部分で構成されたのがアニメーション版
その裏で苦しんだり悲しんだりする模様が繊細かつ緻密に描かれているのが本作である…
というような双方のスタンスやテリトリーの違いでしょうか。




言の葉の庭

全体は写実主義的構成ですが、元来写実主義に傾倒した日本文学の自然主義とは異なり、
心理を使役し情景やリアリズムを表現する手法を効果的に駆使しているという意味では、
仏写実主義文学の要素がみられる作品という印象を些か受けました。


幻想を排した現実の美醜。 雪野のリアル



「非現実的なくらい、異様なくらい、雪野は美しかった。」

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ヒロインの個性を「美女である」
という切り口で取り扱う場合、
その人物の物語は、必然的に
その美貌ゆえに憧憬される物語か、
或は迫害される物語かの二択となります。
前者は幻想主義的な創作物に、
後者は自然主義、写実主義的作品に
それぞれカテゴライズされ、プレヴォの
「マノンレスコー」などが代表的ですね。
しかし後者の場合、その美女は
「迫害される」という事象だけで、
写実や自然たりえるのではなく、

「迫害されるが故に無力になった姿」

という結果の描写が重要だと思っています。

美貌故に、異性を惹き付け、嫉まれ、
信頼されず、無視され、
「美貌は損だ」といっても嫉まれ、
「得だ」と言ったら憎まれる。
誠実だと欺瞞だとされ、
不実だと傲慢だとされる。

七話の相沢編にしろ、雪野が自己弁護を
誰にもせず、ただ言葉少なく堕ちて、
深い闇の底でタカオと出会うまでいたのは
彼女自身がそれを長年の経験で
理解しているからであり、それを
ありのままに飾らず見せるところに本作の
写実性の高さが窺えます。



・その他の登場人物のリアリズム




ジョルジュサンドの芸術論

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本作には、不条理な迫害を受けたり、
与える人物は数多く登場しますが、
サンドの「芸術論」のようにそれを
是正したり、勧善懲悪を
体現する指導者やリーダーも不在であり、
みんなある意味で利己的で狭隘で、
また弱く儚い存在です。


周りの人の成長や努力を評価し、
自らの励みとする人の代わりに、
自分自身の正当性を守るため、
他人の正当な行為を否定する人はいる。
己の職を賭してでも愛する生徒を
言の葉の庭BD

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守る教師はおらず、己の身の保身のため
盲目し、愛する人を見捨てる教師はいる。


しかし存外、現実も似たような様相であり、
漫画のヒーローや指導者などというものは
そう都合よく誰の周りにも居ないものです。
これが、

「人間なんて、みんなどっかちょっとずつおかしいのよ」

という一聴して茫漠とした本作の象徴的な
台詞の中核を成す解釈として作品全体に
横たわっています。



現実を描くからこそ「希望」が美しい。




ジョルジュサンドの芸術論

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西村賢太氏の著書の記事でも書いたことですが、
現実をただ見せるだけで終わってはなりません。
新海監督は傷つけ傷つけられる
そんな登場人物の内面にある不完全な
精神性で表現される「希望」の哲学を
終盤に配置し、読者に強く語りかけます。

不完全な人間たちがお互いの言葉で、
時には喜びや勇気を得て前に進む様子は、
聖書の喩え風に言うなら
”盲人が盲人を道案内する”
ような按配ですが、こういった爾余の
日常生活に澎湃する様々な苦しみから
自らで考え自立していく数々の描写によって
この作品は、単なる自意識的な悲愴を
売り物にするだけの作品とは一線を画す
芸術となっている様子が伺えます。





監督が示した映像と文章の差異について。


さて、話は些か飛躍しますが、新海氏が映像作品と小説という異なる二つのコンテンツが
もつ表現の特徴を比較した見解を、相互の情報量の差異など踏まえつつ、
書かれている本書の「あとがき」は極めて興味深い内容です。
文中、繊細なニュアンスで示される直喩を映像で表現するのは非常に困難である…
という氏のご見解は、公式HPでも本作が出版される前から示しておられましたが、
より掘り下げて書かれた今回の「あとがき」の内容を拝見していると、
改めてこういった深い理解がある人が制作してこそ初めて「言の葉の庭」という
あの文学色の強い映像美が完成しているのだなぁ…と思います。

原作が漫画やライトノベル、或は小説といった情報量が多いコンテンツで
生み出された作品を、巨額の製作費を投じて映像化した作品というのは
この世の中数多くありますが、結局その情報量を限られた時間で捌ききれず、
「展開が走りすぎ」という一言のもとに一刀両断されてしまうような作品が
稀に生み出されてしまう問題も、
こういった新海氏の持つ「相互の持ち味と情報量の差異」
という哲学を念頭に置いて制作すれば、よりよく、
整然とした作品になるのかもしれないなとも感じる次第です。

そして何より、新海氏が監督としてお作りになったZ会のアニメーションCM「クロスロード」
実際に上記で監督が示された哲学を遺憾なく発揮して制作された秀逸な一作で、
120秒という非常に短い時間の中で、後に実際に小説として刊行されるほどの深い情報を
内包させることに成功しています。


作者の思想が前作よりも明瞭に。



秒速5センチメートル

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因みに前作のノベライズ版「秒速5センチメートル」は、
新海氏にとって初の小説作品でありましたので、
表現も比較的柔らかく、角ばった主張もあまり散見されることは
ありませんでしたが、今回の「言の葉の庭」のノベライズは
自己主張を籠めた表現の幅が目を見張るほどワイドになっており、
前作に比べ、小説としての深みが一段と増しており、文学的抒情性もまた然りです。
例えば終盤、孝雄の母親である怜美のボーイフレンドである清水君の言った

「でも本当に、本当に心の底からなにかを創りたい人は、
誰かになにかを訊いたり言ったりする前に、もう創ってるんだ」


という一言は、この一文に至るまでの「若者とネット」に
関する解釈を加味して考慮すると、まさしく新海氏のポリシーを示す
重厚な一文であると感じました。
更にこういった言葉を清水というキャラクターを通じて、
将来への明確な指針を持つ孝雄に送っている新海氏自身が、
やはり彼のような人物を応援したいのだな…とも思うわけですが。











2016年9月2日  最新作 「君の名は。」を観た感想とか。





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