2014年12月20日

官僚たちの夏  城山三郎


今回は城山三郎先生の代表作の一つ「官僚たちの夏」を
読みましたのでその話でもつらつら書いていきます。  

DSC04231[2][1].jpg


国内産業保護と貿易自由化。


本作のアキレス腱は「指定産業振興法」で、
より広義な解釈で言うなら、巨大な外国資本の脅威の元、
国内産業の保護と育成を行うことの困難さにあります。
特に冒頭八十八頁で、通産大臣に再任した池内が「通商産業省」と
揮毫するシーンは、その「是非」の部分を巧みに演繹する印象深いものです。
無意識に「通商」の字を大きく書いていることを指摘された池内を通じて、
一つの省に国際化の「通商派」民族思想の強い「産業派」に二分され、
権限委譲で年々弱体化しているこの省は、一枚岩ではないことが示され、
同時に国内産業の保護と健全な育成を行うことの
是非というテーマはここを中心に掘り下げられています。


↓ Full-Resolution ↓

Photography by makomako972
↓ Return to top page ↓
http://makomako972.seesaa.net/

- CLICK TO ENLARGE -
次にその困難さ、という意味では、
行政が介入を望む各産業の経営陣との折り合いを通じて描かれます。
他の方も書評でお書きになっていることですが、この小説では一連のやり取りが
「産業派」寄りの視点で描かれていますので、表層的に読んでいると、
利潤主義的な企業経営人たちの恣意的な振る舞いには少々辟易してしまいそうですが、
山崎豊子氏が書いた「華麗なる一族」では本作とは正反対の企業人側から、
国内産業を合併で強力化しようとする政府、大蔵省の官僚の思惑の中で苦悩する
銀行家一族に焦点が当てられていますので、対比的にみると興味深いものがあり、
また思想が一方に偏らず、スタビライズされるので、
私的にこの二作の組み合わせは好きです。
人を人とも思わぬ冷徹な経営手法を講じる辣腕銀行家、
万表大介はある時、娘婿で大蔵省主計局次長の美馬からその人格を
愚弄するように「恐ろしいお人だ」というようなセリフを云われます。
それに対し大介は、こんなことになったのは、元はと言えば、君ら大蔵省が
言い出した金融再編計画のせいだ!と気焔を吐くような反駁をしていたことからも
わかる通り、国外の巨大資本に対抗するためには合併、或は生産量の規制、調整を
行わねばならないというこの時期の各省庁の産業保護行政は、
確かに企業側にも一定の痛みを伴うものでありました。

GDP +4.5倍、中央銀行あるいは中央政府等の
金融当局が保有する外貨総額を示す外貨準備高が
三十五億円も増えるという稀に見る華やかな経済成長を遂げた一九六○年の
日本のこの十年間の光の隣には、そういった官僚たちや企業人たちの苦悩もあった…
ということを知ることができる重要な記憶として、この時代を描いた経済小説は
どれをとっても非常に興味深く、また意義深い存在ですね。



片山 VS 庭野



さて、経済、行政という場から切り口を変え、

↓ Full-Resolution ↓

Photography by makomako972
↓ Return to top page ↓
http://makomako972.seesaa.net/

- CLICK TO ENLARGE -
本作でそれと同等に注意深く描かれている「人」についても書いてみたいと思います。
この作品では風越という視点を以て「人事」という
権限を用いることで、様々な人が描かれています。
しかし風越の洞察で見る「人事」は、単に人の職務上の役割を定めるという
事だけではなく、人の人生観やそれに基づく
一人一人のライフスタイルの多様性を鮮明に浮き彫りにする、
一種の高度な人間観察禄のようなものにも見えます。
しかし同時に風越は「フンドシ」や「おやじさん」といった言葉が似合う、
まさにこの時代のステレオタイプのようなパーソナリティーを持った官僚ですので、
良い意味でも悪い意味でも兎に角「全力」という行為以外に高潔さや信念、
或は神聖さを見いだすことをしないタイプの人であることも相俟って、
好きか嫌いか、認めるか認めないか…
という点に於いては評価基準も二元論的で、解釈し易いです。

つまり、認める&好き=庭野 認めない&嫌い=片山  という感じ。
結末としては庭野が過労で倒れ、片山が化学工業局長に就任したことを考慮すると、
風越の哲学に反する結末ですが、
この両者の出来事は記者の西丸が最後の最後で言い放った

「競走馬じゃあるまいし、全力で走りさえすればええというもんじゃない。いや、
競走馬かて、毎日毎日全力で走らされりゃ、
脚でも折れるのが関の山や。競馬にたとえてわるいが、
あんたの持ち馬は、みんな、死ぬか、けがしてしもうた。死屍累々というところや。
牧かて、ひょっとすると、ケガしかねん馬やが、片山ならケガはせん。
牧が柏戸なら、片山は大鵬のようにやわらかい男や。
これからはああいう男の世の中になるんとちゃうか」


という正鵠を射た予言の証左であるような気もしますね。

このブログでも度々引用させて頂いている
松下幸之助のベストセラー本「道をひらく」でも

「額に汗して働く姿は尊い。だがいつまでも額に汗して働くのは知恵のない話である」
(一四六頁  働き方のくふう)

↓ Full-Resolution ↓

Photography by makomako972
↓ Return to top page ↓
http://makomako972.seesaa.net/

- CLICK TO ENLARGE -
という言葉を非常に重要だなぁと感じている僕としてはバリバリ片山派ですので、
風越さんの下では働けないでしょう(笑)

戦中戦後の文豪、坂口安吾が代表作「堕落論」の中で、
民族主義的な「肉体の酷使耐乏への謳歌」と「過去へ向けられた憧憬賛美」
を否定する文章を書いていますが、安吾の時代には賞賛され、
美化された「肉体の酷使耐乏」が丁度この頃に「多様なライフスタイル」へと
移ろっていく時代であったのかもしれません。
そういった意味でも一九六○年は、最も国が疲弊していた終戦時と、
最も華やかだったバブル期の中間に位置する時代ですから、
政治、経済、行政、企業、そして人の生き方も大きく変化していく十年だったのでしょう。



↓ Related article & External Links ↓
関連記事 & 外部リンク

AMAZON




posted by makomako972 at 02:37| 読書 | 更新情報をチェックする


other con[1].jpg



DSC05355[2A].JPG
財布とカード類の選定
DSC05355[2A].JPG
TREKのカーボン
バイクを買う
DSC05355[2A].JPG
ビアンキの
ロードを買う
DSC05355[2A].JPG
自転車専用
ガレージ制作


DSC05355[2A].JPG
自作、工作したもの。
DSC05355[2A].JPG
オススメの
CDやBDの紹介
DSC05355[2A].JPG
100冊読書の記録。
DSC05355[2A].JPG
シアターシステム紹介。


DSC05355[2A].JPG
法務大臣からの感謝状
DSC05355[2A].JPG
外出録の
まとめ
DSC05355[2A].JPG
YAMAHA
U3A
DSC05355[2A].JPG
デスクの小物たち。






my bikes[1][1].jpg



DSC05355[2A].JPG
Harley
Sportster
DSC05355[2A].JPG
DUCATI
SS900
DSC05355[2A].JPG
YAMAHA
FZ400
DSC05355[2A].JPG
YAMAHA
JOG ZR
DSC05355[2A].JPG
HONDA
NSR250
  
DSC05355[2A].JPG
KAWASAKI
ZEP 750
  
DSC05355[2A].JPG
HONDA
SPADA 250




latest article[1].jpg


最近の記事