2012年01月16日

車輪の下  ヘルマン・ヘッセ

誰もが知る有名作だから読んでおいた方が良いだろう…という決して前向きでない理由で読み始めた本作ですが、
久々にハマりました。僕はとっても好きです。


車輪の下



だから、大人なんて大っキライ!!



DSC02957A.JPG本作の主人公ハンスと同じく神学校を卒業し、後に教育家、宣教師として
広く世界に知られた米国聖公会の宣教師チャニング・ウィリアムズ(写真右)は、

「わが国では、多くの若者が絶望という学校の中で育っています」

という言葉を残しています。
今日に於いても日々勉学に励む学生たちの言葉を拝聴させて頂くと、
満足している人なら兎も角、不満があるという方の感情の発露には、少なからず
自らの心の充実と充足を伴わない高等教育を受けている事に対する
違和感というものが潜在的に存在しているように感じる次第なのですが、
進学にしろ受験にしろ就職にしろ、こういった心情と現状の齟齬が
存在する方々の根底には社会が常識として据える理想、そしてそれを盲目的に
信仰する大人たちの影響とそれに抵抗する心理との板挟みになっているような
状況が私的には感じられる時があります。
それがチャニングの指摘した絶望と同義なのかは解りませんが、少なくとも
社会の理想と自分の理想との隔たりに苦悩し、最終的に命を落としてしまった
本作のハンスには、学校というものが絶望的な場所として写っていたことを鑑みると、
埒外にも的外れな事態とは思えません。

親や教育者が、自分自身では何の意識改革や行動を興さず、
代わりに子供たちの自由を奪い、それらに高等な教育を与え、自分の名誉を
他人任せに得ようとすることが時としてあるように、本作に登場する
多くの大人たちも、内に秘めたる名誉欲と瞞しの正義感からくる
ささやかな満足感に酔いしれ、貴重で多感な青春時代を持ち得たハンスを
" 車輪の下 "へと容赦なく追いやります。
ヘッセは本書中でいみじくもその社会や人種の性質を言い表し、

" そしてまただれひとりとして、学校と父親と二三の教師たちの、やばんな名誉心とが、
このきずつきやすい人間を、こんなことにしてしまったのだ、
ということを、ゆめにも考えなかった。
なぜかれは、もっとも感じやすい、そしてもっとも危険な少年期に、
毎晩、深更まで勉強しなければならなかったのか。
なぜみんなは、かれの飼っていたうさぎを取りあげたのか。
ラテン語学校までのなかまと、わざわざかれを疎遠にしてしまったのか。
かれに釣りやぶらぶら歩きを禁じたのか。
そしてけちくさい、精根をからすような功名心という、
空虚な、卑俗な理想を、かれのむねにうえつけたのか。

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過度にかり立てられた子馬は、これでもう道ばたに倒れてしまって、
これ以上使いものにならなくなったのである。"


と書いています。 (本書第百四十九~百五十頁)

去年の末に書かせて頂いた城山三郎先生の代表作「官僚たちの夏」に於いて、
最も印象深い台詞として引用させて頂いた場面、
主人公である通産官僚風越信吾の部下たちが、
日々の激務で次々に過労で命を落としたり、
病院送りになっていく姿を見た新聞記者の西丸が、風越に言い放った

「競走馬じゃあるまいし、全力で走りさえすればええというもんじゃない。いや、
競走馬かて、毎日毎日全力で走らされりゃ、脚でも折れるのが関の山や。
競馬にたとえてわるいが、あんたの持ち馬は、みんな、死ぬか、
けがしてしもうた。死屍累々というところや。
牧かて、ひょっとすると、ケガしかねん馬やが、片山ならケガはせん。
道をひらく牧が柏戸なら、片山は大鵬のようにやわらかい男や。
これからはああいう男の世の中になるんとちゃうか」


というのも、同じ馬が再起不能の怪我をするという
比喩的表現で表しているのが興味深い点です。
西丸の言葉に耳を貸さなかった風越のように、ハンスの死に際しても彼を
「情けない」と一刀両断に処理してしまう校長の言葉を聞いていると、
やっぱ大人って苦手だなぁ…とチョット思ってしまいますね。


ハンスのパーソナリティー



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上記のような恣意に溢れた大人たちを擁護する、
或はハンスの人間的な欠点の指摘として、彼の他律的な性格が
挙げられるのかもしれませんが、実際のハンスの言動、そして振る舞いには、
「待つ」などの掌編や「人間失格」など一部の太宰文学に見られるような
社会との戦いを一種放擲し、沈黙する事によって生み出される
"自虐的自己愛"を用いて文学的アプローチを行うような描写は無く、
ハイルナーとの友情を侵害しようとする教育者たちの論調に反駁したりと
抵抗する姿勢が見られ、また己の正義を貫きたいという願望と行為が見られます。
もし、ハンスが、前述の人間失格の主人公である葉蔵のように、
父親から「お土産は何がいいか?」と聞かれたくらいでも
答えられないような無抵抗の子供であったなら、
僕は読了時に、ここまでハンスに憐憫と同情を感じなかったのかもしれません。
しかし彼は様々な意味で死力を尽くし、
最善を尽くしたにもかかわらず、結果的に彼の望む時を生きられなかった。
それを「ハンスはイエスマン過ぎるんだ。だから駄目になったんだ」というのは、
昼間に路地を歩いていて引ったくりに遭った女性に対し、
公判で容疑者である連続窃盗犯が「昼間に路地を歩いているのが悪いんだ」と
答弁するような理不尽さを感じます (どんな喩えだ 笑)

でも、物語の最後、息子の墓を前に「どうもがてんが行かん」と、
ため息をついたハンスの父親の心の内に渦巻く理不尽を感じる情も、
遠からず、近かからず、といったようなものなのでしょうか。



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posted by makomako972 at 18:36| 読書 | 更新情報をチェックする


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