2015年11月30日

赤と黒   スタンダール

バルザックの 「ゴリオ爺さん」、ハーマン・メルヴィルの「白鯨」、
そしてレフ・トルストイの「戦争と平和」などと共に、
サマセット・モームの世界の十大小説の一作に数えられ、誰もが知る世界的傑作、
スタンダールの「赤と黒」のことでも今回は書いてみたいと思います。

赤と黒

ジュリアン。


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本作の中で最も印象的なのは、異質なまでに
精緻な心理描写を行うため、上下巻で800頁を
超える大作にも拘らず限られた登場人物数で
物語が描かれている点です。
一つの認識の変化、一つの行動の変化に対し、
徹底的に思考が内包されており、写実主義、
自然主義を基礎とする心理小説らしい個性が窺えます。

これだけのものはクンデラの
「存在の耐えられない軽さ」以外、
今のところ見いだせないのが正直なところです。

さらにそれらの文章は作者が文才を
誇示するための衒学的なものではなく、
作品の完成に不可欠なものだけで
構成されているのですが、これには
ジュリアンという変質的な人格が関係しています。
一見して「女好きの出世欲に駆られた傲慢な少年。」
というレッテルを張られかねないこの少年を

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描写するのに、安易な文章で単略化して書き飛ばすと
彼の幾つかの行動の動機は不可解なものとされるか、
将又、非効率で稚拙で無知蒙昧なものであるとされ、
極めて空々しく、白々しい人格像だけが
読者に印象として醸成されてしまいます。

適切な文章による心理描写が無いと
「軽薄な怠け者」のレッテルを張られかねない
という意味ではコレット作の「シェリ」なんかも
そうですね。

更に上述の五階を回避するためには人格だけではなく、
バルザックの 「ゴリオ爺さん」 やユーゴーの
「レ・ミゼラブル」などの同年代の作品同様、
王権復古当時のフランスの政治事情に関する社会的な
ヒエラルキー構造への理解も絶対不可欠であるといえます。


レナール夫人。



マチルドが先祖の英雄を心の支配者としているように、
序盤から中盤にかけてのレナール夫人の心理を
支配するのは、神への信仰と、その信仰の
喪失によって愛する三人の子供やジュリアン自身が
落伍者として命を落とさないかという恐怖心ですが、
終盤、牢獄でのジュリアンが唯一救いを感じたのが、
自らの全てを擲って死に物狂いで夫を無罪にするため、
奔走するマチルドや、旧友のフーケではなく、
自らの地位を失墜させ、破滅へと追い込んだ恨みから
郷土の教会で凶弾を二発も打ち込んだ
レナール夫人だというのは極めて興味深い点です。

尊厳のため、潔い死を所望する彼に対し、夫人以外の
人間たちの行った行為が生命の救済という謂わば
反対のことであった…というのもありますが、
控訴を勧めるマチルドやフーケの助言には
従わなかったジュリアンが夫人の言葉で
あっさり承諾したという心理からも夫人への
深い愛に基づく贖罪と慚愧の念があったことが伺え、
マチルドの狂おしいまでの嫉妬も哀れではありますが、
理解できるところではあります。



・宝塚歌劇団星組の同主題の公演



話が二転三転するようですが、タイトルしか知らなかった本作について真剣に
考えるようになった動機として宝塚歌劇団星組の同主題の公演を見たという
出来事があり、そこではジュリアンを安蘭けいさんが、
レナール夫人を遠野あすかさんが、そしてマチルドを夢咲ねねさんが
それぞれ演じておられるのですが、二幕終盤のジュリアン投獄中に夫人が
面会に来る場面で夫人がジュリアンの不道徳を告発する手紙について言った

「あの手紙、書かないと罪に落ちると副司教に言われたこともそうだけど、
 今思えば私の気持ちの内にはラ・モールのお嬢さんへの嫉妬があった」


と告白する場面が出てきます。僕の読んだ限りではこの夫人の描写は
小説には出てこなかったと思いますが、この一言はジュリアンがラ・モール邸で
マチルドたちと過ごしている間、夫人がどのような愛ゆえの苦悩の内に生きていたかを
定義する一言として私的には気に入っています。
そして何より彼女は世界中の誰よりも愛するジュリアンのただひとつの遺言を、
その愛ゆえ忠実に守り生き抜いた。
しかし本能は、そのあまりに強大な愛が、どれほど尊くかけがえの無いものであるかを
彼女の命をもって証明したのです。

「貴方の愛なしには生きていけない」 実に普遍的でよく聞くこの恋人の言葉を、
夫人は女性として強靭な精神を持って、一切の矛盾なく体現しています。


マチルド。



ラ・モール邸でのマチルドの二転三転する
精神状態は非常に観察のしがいがあります。
レナール夫人の章の冒頭でも書いた通り、
彼女の精神の根幹を成すものは、数百年前の
英霊への憧憬であり、その時代錯誤で奇異な
枠に収まる人格は身の回りの貴族たちにはおらず、
偶然そこに貴族の腐敗を嘆き立身出世を誓い、
生まれ持った異常なまでの自尊心に支配された
ジュリアンがピタリと収まる瞬間が訪れます。
ジュリアンは幸にも不幸にも些細な言動や仕草、
振る舞いなどを細かく選定され、マチルドは
彼がそのお眼鏡にかなった瞬間だけ、
彼にかつて国王を救助しようとして命を落とした
ラ・モール家のモニファスを投影でき、そして自らはその幻影を使役し、
生首を抱いて丘を上った崇高な恋人マルグリットを体現できるという魅力に取り憑かれます。
結果的にその瞬間だけマチルドはジュリアンの奴隷となるわけですが、その若さと自尊心が災いじて長続きしません。
しかし普遍的なマテリアリズムに翻弄されず、
一貫して真の勇気を体現する人格を崇高とする考えは、彼女の裕福な出生によって
培われた精神であるという点を差し引いても、移り気の塊のような彼女の人格に一本の背骨を通し、
隷属に落ちず、人としての品格が損なわれないようにする効果に一役も二役も買っている印象を受けます。
後にロジア人貴族コラゾフ公爵の提示した作戦で、フェルバック元帥夫人をテコのように
利用して確固たるものとしますが、ここで嫉妬心を煽られた彼女は唯一、
歳相応の少女のようで非常に愛嬌があって可愛らしいです。
最終的に彼女は自らの愛と、将来に対し大きな犠牲を払い、嘗てあれほど尊敬したマルグリットの行動を追随します。




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タグ:仏文学
posted by makomako972 at 01:46| 読書 | 更新情報をチェックする


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