2015年12月28日

椿姫   Alexandre Dumas fils

今回は前回と同じく、フランス文学の代表作の一つである
若きデュマが書き上げた 「椿姫」 とその作中でシンボリックな
役割を果たす 「マノン・レスコー」 の事でも書いていきたいと思います。
前もって言わせていただきたいのは、僕はこの作品を初めて読んだ時から
マルグリット・ゴーチエ、或いはヴィオレッタ・ヴァレリーという
人物に大変な憐憫と尊敬の念みたいなものを感じたので、
視点が彼女側に大きく偏ってしまっています。


椿姫



真の強さを持つマルグリットと、偽りを誇示する者



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「赤と黒」 「ゴリオ爺さん」 「レ・ミゼ」
などと同様、本作にも仏政治が復古王政前後
数十年の間に生み出した社会的な
ヒエラルキー構造への
アンチテーゼが見られます。
特徴的なのは娼婦という落伍者の人格を用い
その上位構造を批判していることにあり、
例えば物語終盤で、息子と別れてくれと
マルグリットに言い寄るアルマンの父親の
言い分にはヘッセの 「車輪の下」 に登場する
稚拙で醜く利己的な教育者や親の姿が伺えます。

立派な身なりと言葉を用いたところで、
息子が娼婦などと一緒になっては倅や自分、
或いは自分の家柄の名誉が損なわれ、迫害されないか

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という恣意的な恐怖しか窺えません。

翻ってそんな醜い背後の姿をマルグリットは
見抜いつつも、自ら以外の人間の幸福を
冷静に追求し、諦観によってアルマンの父親の
要求を尊重する姿は、一種のヒロイズムの体現と
言えるかもしれません。

サンドの 「愛の妖精」 の主人公ファデットも
そうですが、徹底した秩序に支配された愛に基づき、
幻惑に囚われず、信念を突き通す行動する女性の姿は
余人をもって代えがたい独特の魅力があります。
そして後述するマノン・レスコーのマノンと、
本作のマルグリットの最大の差を
僕はこの点に見出しています。



マノン・レスコー


本書末尾には、

「もしこの物語を読んで、シュヴァリエのあまりにもだらしなさに眉を
ひそめるひとがあるとしたらその人は真の恋愛とは、
また女に迷うとはいかなるものであるかを知らない人である」

という論調が出てきます。

この手の論調は恋愛小説では頻繁に慣用される種のもので、
ゲーテ 「ウェルテル」 の有名な論評、

「もし生涯に『ウェルテル』が自分のために書かれたと
感じるような時期がないなら、その人は不幸だ」


も似たような言い分です。 ようは劇場型なんです(笑)

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勿論ウェルテルへのシンパシーは
恋愛だけに留まらず、ある種のボヴァリズムを
含む広義なものですが、一応視点を恋愛のみに
絞って考えるなら、この2つの物語は、
主人公の心理が受動的か能動的かという差を除けば
同様の倫理で定義できると感じました。  つまり、

ウェルテルは人妻を愛してしまった、という能動的
な欲求に苦悩しますが、シュヴァリエはマノンという
魅力あふれる女性を他の男から守るという
受動的な欲求に苦悩しているという点から来る差異です。

ウェルテルは欲求と道徳心の板挟みの末、
略奪のような具体的な行為に至らず自殺し、
シュヴァリエは直情的な性格に行動力が伴うので
非効率で不公正な行いを繰り返す。

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「恋は盲目」 は結構ですが、そのために行われる
不正や不道徳の全てを恋だから仕方ないね、
と言われても今ひとつピンと来ないのです。挙句、
「これが愛であり、リアルだ!同情できないものは
人を愛したことがないものだ」

と正当化されたのでは秩序もひったくれもないので、
冷静になってファデットやマルグリットを見なさい!! 
と少し言いたくなってしまうところではあります。
彼女たちの自らを含めた全て生命を尊重するその姿勢こそ
「これを自分のものと感じるような
時期がないならそれこそ、その人は不幸だ」
というようなことだと思うんですが。
更にウェルテルにシュヴァリエ、
それに 「赤と黒」 のジュリアンを加えた三人には、
衷心より相手のことを慮って適切な助言を再三にわたり
与えてくれる聡明な親友の存在があったにも掛からず、
三人とも恐ろしいほど馬耳東風だった…
というところも上記のような印象を僕に抱かせる一助となっているようにも思えます。



La traviata  (Variable Artist)



本作を原作としたヴェルディの 「La traviata」 は日本語字幕付きの
全公演分の音声が幾つかネットにアップロードされており、
シドニー出身のソプラノシンガーであるジョアン・サザーランド、
55年オペラ座公演のカラスの音源(一幕のみ)が存在し、
両者とも聴き比べながら作品への理解を深めました。

トゥーランドット程ではないですが、
ヴィオレッタのソプラノは
一幕のアリアから、非常に高い音域に
おける豊かな声量を要するトリッキーな
パッセージが多く出てきます。
しかしカラスの音源ではどの年代で
聴き比べても余裕で歌っているような
印象を受け、圧倒的な天賦の才に
裏付けされたベルカントを感じます。 
「Nessun dorma」 なら
パヴァロッティの音源を
流しておけば無難だろう
的なスタンダード感があります。



La traviata ミラノ・スカラ座 (2007)



ゲオルギューによる一作でオペラ椿姫のBDといえばコレが筆頭にきます。
DTS MA 7.1ch収録で広空間サラウンドを意識した
秀逸な音響デザインが特徴。日本語字幕付き。

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原典と異なり、アルフの
父親の慙愧の念が三幕終盤以降、
象徴的に提示されているのが
印象的ですが、それでも
あの父親は好きにはなれません。

二幕終盤、パーティーの一場で
彼女を辱めたアルフレードの
振る舞いに対する父親の義憤も、
一種のヒロイズムの体現とも
定義できますが、「公衆の面前」
という体面上の問題だと
認識すれば、ヴィオレッタに
「息子と別れろ」 と直訴した
心理とも符合します。
よって彼がヴィオレッタの本質を見通したのは、
やはり病の床に伏した彼女の言葉に感化かれた
憐憫が呼び起こす深い自責の念に駆られた時だけなのでしょう。

しかしキャスト、オーケストラを含めた公演内容自体は
本当に最高なので未視聴の方は是非。


Manon  パリオペラ座バレエ団 (2015)



NHK BSでOAされたのを拝見。
本公演はプリマであるオーレリ・デュポンの退団公演で、
放送は幕間に本人のインタビュー映像が付属する贅沢なプログラム。


42歳という年齢を感じさせない
しなやかな曲線美を披露するデュポンは
バレリーナとしてこの時まで培ってきた
経験や技術を駆使することで
見事に19歳の美少女に擬態しており、
物語をシンボリックに司る
「抗いがたい運命」 という本作の
深遠なテーマを見事に体現しています。


特に「沼地のパドドゥ」での
スタミナには驚嘆。

舞台演出や振付は衝撃的。 
どう衝撃的だったか…ということは、
このマノンというバレエ演目を
観た人なら直ぐさま察しがつくと
思いますが、あの直接的な表現です。
特に第三幕。



舞音-MANON- (2015) 宝塚歌劇団月組


まさちゃぴによるマノン。
何より印象的だったのが古典小説の露悪性を
見事なまでに打ち消した「まさしく宝塚!」…という脚本。

勿論、龍さんご自身が持つ
華やかさも助力してのことですが
「シュヴァリエのだらしなさ」
「シュヴァリエの一貫した信念」
へと化けているのは流石!

更に妖艶な魅力を持つ愛希さんの
マノンも魅力的ですが、
後にスカステで拝見した新人公演で
大活躍していた朝美絢さんの
パフォーマンスも素晴らしく、

ビバ!95期!! といった感じ。



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タグ:仏文学
posted by makomako972 at 03:12| 読書 | 更新情報をチェックする


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