2017年08月08日

はつ恋  ツルゲーネフ


待ち合わせ場所に停車した車内で人を待っているときのささやかな楽しみ。

①ナビでトキメキポイントを入力 ※僕の場合は主に宝塚大劇場
②ルートを指定。案内を開始。
③アナウンス「100m先を右折…」


わー、僕これから大劇場行くんだー♪

というマッチ売りの少女的な妄想あそび。



……

はぁ…なんか悲しくなってきたわ。


ま、そんな話はともかく。。
今回はツルゲーネフ作品の話でも書いてみます。



バイクガレージ2




ジナイーダの人格。



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西洋文学でありながら彼女の
人格は一見してカルメンの
ような確固としたものより、
寧ろティファニーのホリーや
ギャツビーのデイジーのような
米文学に登場する
自由奔放なヒロイン像が浮かびます。


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しかしそこは重厚な
歴史を持つロシア文学。
厚化粧や肩にかかる派手なファー、
或は艶やかなネオンサインの
ような即物精神ではなく、
伝統的なバロック様式の
中で培われる貴族社会の
少女像が見えてきます。


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貴族としての自尊心によって
醸成された空想概念への
刹那的な憧憬は「赤と黒」の
マチルドに近い人格像かも…
というようなことも感じました。



父親の影。



父とジナイーダの情事を明確にせず、お互いの関係を
100%描かないことで2人の関係を複雑かつ深遠に
見せることに成功している点は興味深い点です。


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更にその2人を口無しの死者と
することで主人公の初恋の物語は
完全な形でパッケージ化されてます。
この構造はサガンの処女作
「悲しみよこんにちは」における
アンヌの事故死におけるセシルの
心理構造に酷似しています。

いずれにせよ
主人公の体験したこの初恋の告白は
奇妙でありながらも甘美な世界観の
発露であり、それを聞く読者各々は
そこから自らの初恋の経験を照らし合わせ、
不思議なシンパシーを萌芽させていきます。
posted by makomako972 at 21:41| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年07月20日

非常識な本質  水野和敏


普段から古典文学作品ばかり読んでいる人間なので
このテの本は何だか久々。

カープロダクトに携わる方の著作としては奥山清行さんの
「フェラーリと鉄瓶」以来ですが、
素晴らしい著作でとても勉強になりました。


Madone4.5



本質を見極めたひとの面白さ。



スーパーカーづくりの本質論も興味深いのですが、
私的に最も感銘を受けたのが、
レースマネジメントの側面から見たエンジニアリングです。


サーキット全体の数%しかない
全開セクションの為に
最高出力至上主義のPU設計をしても
最大パフォーマンスを
発揮できないとする
理論は単純明快でありながら
韜晦された本質を捉えた
瞠目すべき洞察です。

MP4/31

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全く同様というわけでは
ないでしょうが、
現在のマクラーレンホンダの
苦戦にもこういった方法論の
応用が有効なのかどうか…
などを考察すると楽しくなりますね。



実際にGT-Rを運転した感覚と。



日産GT-R

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実際に京都で僕がGT-Rを
ドライブした時に感じたのは
異常なまでの剛性の高さ。
そしてスタビリティが
四輪に均等に付与されている
という特別な感覚でした。


日産GT-R

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例えば高速域になって
ダウンフォースが
効いたとかではなく
低速域からのフル加速でも
その効果は顕著に表れ、当時は
A-ETSやベクタリング統御などの
ソフトウェアの恩恵かと
推測していたのですが、
日産GT-R

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PMパッケージの4WDという
重量マネジメントが
メカニカルD/Fとして
機能していたのかと今更ながら納得。
ペラシャフトを往復させてでも
採用する価値のある
レイアウトですね。



運命論が助力する自己実現。



2章79頁で同氏が祖母の部屋で見つけた格言、

「悪いこと、天知る、地が知る、人が知る」

日産GT-R

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が後に自らのビジネス観に
影響したとする認識は、
ウェーバーがプロ倫で示した
資本主義の誕生に多大な影響を
及ぼした…とするピュータリズムの
経済倫理と似ていて興味深いです。


日産GT-R

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お天道様がいつもみていると
素直に思い、行動した…
という思想原理も
プロテスタンティズムの
「運命論」に似ています。

人知を超えた概念が時として
「天職」という自己犠牲に
多大な影響を与えるとする

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認識は京セラの創業者である
稲盛和夫氏の著作や、
松下幸之助氏のベストセラー
「道をひらく」などにも
見られるもので、数々の偉人たちの
モチベーションに多大な
影響を与えている傾向が窺えます。


水野氏が提示する、人材像。



こちらは単純明快で、
主に以下の3点に集約できるように思います。

①顧客意識。
①ゼネラリズム。
②アンチアカデミズム。


の3点。

プロ倫

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①は有名な著作、ドラッカーの
「マネジメント」でも
示されている通りですね

②組織は規模は巨大化するほど
統御が困難になる…
という弊害を抑制するため、
一人ひとりの技術的、
知識的なキャパを広げ、
効率化を促すとともに
発想の柔軟性を養う。というものです。


MP4/31

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③その柔軟な発想の弊害と
なるものの一つとして
アカデミズムを提示しているのも
興味深い点です。
文学に於いてもサリンジャーが
「グラースサーガ」において、
文学はアカデミズムで
形式化されたときに
無価値なものになる…とする洞察に
符合する部分を感じます。


MP4/31

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更に水野氏が批判する
マニュアル至上主義、
前例至上主義は、
第二次世界大戦の陸海空軍の
ストラデジーを解析した
有名な著作、「失敗の本質」に
おいても日本人の
本質的体系として痛烈なまでに
指摘されていますが、
この著作を拝見する限り、
残念ながら社会ではこの
思想的構造は今も少なからず
継承されているようです。

posted by makomako972 at 09:30| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年07月07日

白夜 ドストエフスキー


さて、今回はドストエフスキーの短編の話でも書きたいと思います。


DSC07430A[1].jpg



ナースチェンカ「私って悪い女かしら?」



これを読んで感じたことは

「僕は物事を主観的にしか見れてない」

ということです。

それは瞬間的にナースチェンカの振る舞いを
軽薄と感じたからに他ならないのですが、訳者解説の

少女は(中略)だしぬけに現れた以前の恋人とともに、
白夜の街角に消えてしまう。
その空想が現実と触れ合ったとき、ある者はそこに幻滅の悲哀を感じ、
ある者はこの上もない喜びを感ずる。


を読んでようやく気が付くわけです。

なるほど。彼女にはなに一つの不道徳もないですよね。

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こういう描写の仕方は
メリメの「カルメン」にも見られ、
束縛に幸福を見いだすホセと
自由に幸福を見いだすカルメンの
2人の愛を論じるとき、カルメンが
利己主義的だと切って捨てることが
決してできないのと似ています。



本作の主人公について。




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主人公の精神構造は癖があって
ドストエフスキーらしいですが、
何だか読んでいてゲーテの
ウェルテルを思い起こしました。
あの盲目感、あの熱狂ぶり、
そしてあの無限の妄想っぷり。

だとすると主人公は最後の手紙で
ナースチェンカが
評したように、黙って引き下がり
悲しみに耽るしかないでしょうか。

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嫉妬心に駆られてマルゴーを
苛めまくった「椿姫」のアルマン
や、「マノンレスコー」の
シュバリエみたいな
キャラだったらまた話は
変わるのかもしれませんが、
どう考えても、本作の主人公は
穏健派ですから。


posted by makomako972 at 06:49| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年06月23日

ある微笑 F・サガン

サガンのファンまっしぐら。

出版順位としては前回紹介した「ブラームスはお好き」より前、
彼女にとって2作目となる作品です。


DSC07430A[1].jpg




この才能は決して偶然ではない。



「私は世界中の人が機関銃を持って待ち構えているのを知っている」

と著者自らが言い表した
本作ですが、サガンはその重圧を
前作を遥かに超える自らの才能で
痛快なまでに跳ね除けています。

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彼女の最大の魅力である
文章精度の高さは継承されつつも、
よりロマンチックに、よりリアルに
人物の描写がなされています。

そしてなによりこれこそが
僕の思うフランス文学の
本質的体型だとも思います。

恋こそ全て。恋に生き。死ぬまで恋。

みたいな。



不倫を題材にした仏文学のいろいろ。




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「ブラームス」では年齢差が、
本能の恋に溺れる二人に
終止符を打ちましたが
本作では規範としての道徳、貞節が
障壁として用意されます。
でもそれはフローベールの
ボヴァリズムや、宗教的規範を
軸として不倫劇を演出した

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「赤と黒」のレナール夫人とも異なり、
本作ではドミニックの
不完全ながらも瑞々しい
少女の心理を使役して純度の高い
ラブストーリーとしての
心理描写を全面に出しています。



ドミニックのイノセンス。




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ドミニックのペシミズムや
シニック、あるいは随所で
見られる厭世主義的思想は
大人…というより自らを
大人の枠に入れようとする
少女自身の恣意的な机上の
知性として独特のイノセンスを
生み出しています。

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このような効果は、
J.Dサリンジャーのフラニーにも
色濃く観られる心理現象で、
有名なアンネ・フランクの
日記にも同様の効果が伺えます。

リュック・ベッソン監督の「レオン」
でナタリー・ポートマンが途轍もなく
可愛く見えるのもこれです。恐らく(笑)


いずれにせよポールの慈悲によって別れを
味わったシモンが大人の男性として生きていくように、
リュックに愛されることのなかったドミニックも、
モーツァルトのアンダンテの中で
恋多きを知る魅力的な
パリジェンヌへと昇華していくのでしょう。

フランソワーズの側からすればたまったもんじゃないですけどね。


posted by makomako972 at 05:57| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年06月03日

ブラームスはお好き F・サガン


「悲しみよ こんにちは」以来、彼女の作品にハマっています。
というわけで今回もそんなサガンの有名作、
「ブラームスはお好き」の話でも書いてみたいと思います。



ブラームスはお好き



美しい悲しみ。




今は二人とも幸せでも5、10年後、彼女はシモンか或は心無い周囲の
噂話によって、破滅的な受難を迎える運命にあります。
更にこの運命はシモン自身の破滅も伴う以上、
ポールはロジェの元へと戻る。
シモンにとってのこの悲しみを「美しい」と形容するところに
サガンの文章精度の高さが感じられます。


ポールが与えたこの悲しみは、
聡明で慈愛に満ちた衷心よりの
愛によってしか与えることの出来ない
「自己犠牲」の側面を持ち、

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それを受けたシモンには「未来」
という若者のみが持つ「美」が
眼前に広がっていることを
を考慮すれば、正しく「美しい」
という語を除いて
他に適切なものは無いでしょう。

処女作で計略によってアンヌ
という女性を死に追いやった
セシルは、その相手の顔を

「これが私の作品なのだ!」

と一連の文章でシンボリックに例えましたが、
やはりこの人の感情を言語に変換する精度の高さには
瞠目すべき魅力があります。



レアとポール。 年下彼氏との最後の恋愛。




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シェリに於けるレアは
シェリとの運命に危機感を
持ちながらも恋の本能に
逆らうことができませんでしたが、
ポールは既の所で自らを待ち受ける
運命への洞察が先行している点が
興味深いですね。


「シェリの最後」では最早"老い"という足枷に
抗おうとしなくなったレアとは違い、
シモンを失ってもポールにはロジェという楔が残る。
これは彼女にとっての福音なのでしょうが、
だからこそポールがレアのように老いないためには、
浮気なロジェへの盲目的な関心と信仰という恋が擬態した
仮初の光明に依存せざる負えないという
ある種の過酷さも浮き上がらせるわけです。

posted by makomako972 at 10:47| 読書 | 更新情報をチェックする


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