2017年03月17日

悲しみよ こんにちは  F・サガン

僅か18歳の少女がこれほどまでに凄まじい小説を書くのか。
とただただ驚嘆するばかりでしたが、
後にこの天才少女が歩む棘のような長い人生を鑑みると、
まさしくこの稀有な才能は、生まれ持った彼女の相から来る
狂人的なインスピレーションに由来する芸術であるような気がします。


悲しみよこんにちは



抑圧と青春。ハンスとセシル。




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20代や30代女性の恋愛と異なり10代の少女の
恋愛には、親なり、教育者なり、時として
社会の常識だったりと言う絶望的なほどの
徹底的な圧制を強いる支配者が
「車輪の下」の大人たちのように存在します。

それらの時として愚鈍で狭隘な者たちへの
反抗の精神は「無知」と並び青春を
青春たらしめる重要な要素だと
私的には思っているのですが、
本作の秀才ヒロインであるセシルにも
その個性が見られます。
いずれにしてもアンヌがセシルにアカデミズムを
強いる様子は前述のヘッセの著作と切り口は
似ているものの、ハンスのような釣りとか兎への
好奇心よりも父親への偏愛や肉欲を含む恋愛像を
その対抗馬として提示しているところに
仏文学らしい個性が現れています。



セシルのイノセンス。



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計略を巡らせるセシルのアンヌへの感情は
アンビバレンスそのもので、恨んでいるかと思えば
その次の瞬間には畏敬の念で彼女を見定め、
自らが巡らせる策略を恥じては
慙愧の念に囚われています。
この定まりきらぬ不完全な思想と信念によって
セシルという少女の瑞々しさや純粋は
強く読者に印象付けられ、「軽薄な悪女」という
烙印は遠ざけられています。因みに
「隠れ家」という極限の状況で、澎湃する様々な
感情を日記にぶつけたアンネフランクにも
部分的にはですが同様の力学が窺えます。

あと特徴的なのはレエモンとエルザの情事を盗み見た
アンヌの絶望に狼狽し一心不乱で説得を試みようとする
セシルの描写の数々です。


彼女はそのとき、体を起こした。顔を歪めて……彼女は泣いていた。
私は突然そのとき、自分がひとつの観念的実在物にではなく、
生きた、感じやすい人間を攻撃したのだという事を知った。
彼女はきっと少しはにかみ屋の小さな女の子だっただろう。
それから少女になり、女になった。彼女は四十を過ぎていた。
そして孤独だった。一人の男を愛し、彼と共に十年、
あるいは二十年幸福でいようと希望していたのだ。
それなのに私は……。
この顔、この顔、これが私の作品なのだ。
私は化石のように、車のドアに身を押しつけたまま全身で震えていた。

岩波文庫 朝吹登水子訳 一四六、一四十七頁


こういう文章を読むと、僕は文章と音楽を同じ次元で
観察していることに気づきます。
つまり本当に素晴らしいパッセージを聴くと心が踊り出すような
制御しきれない幸福を感じるように、この一文を読んだときは

「アヒィィィィィィィィィ!!」ってなりました(←?)




posted by makomako972 at 02:41| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年01月28日

「シェリ」 「シェリの最後」 コレット

今回はフランス女流作家コレットの代表2作の話でも。


シェリ



シェリ



ジョルジュ・サンド

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ゲーテの「ウェルテル」やプレヴォの
「マノン」のように物語上、
男性よりもその意中の女性の方が
立場上強力である…という文学も
男なので楽しく読むわけですが、
サンドの「愛の妖精」やデュマフィスの
「椿姫」のように、そんな男女の優位性が
逆転している作品も興味深いです。




ジョルジュ・サンド

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本作もレアとシェリの年齢差などが
示す通り、後者の文学作品の性質を持ちます。
しかし、同じ仏女流作家であるサンドが
作品で示す快活なフェミニズムとは異なり、
コレットの被造物であるレアは、
悲愴に満ちた運命を辿っていきます。
それが彼女の必然でありながらも
アルマンを愛した椿姫のように、
あまりに気高く毅然とした人物なだけに
読者に強い憐憫を誘います。





シェリの最後




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若さ、美しい容姿、そしてレア。
シェリと呼ばれる人物の全てを
司るこれらの要素だけで構成されていた
前作では、如才ない輝きを放っていた彼。
しかし凄惨で激動を齎した
人類初の世界大戦と
普遍的に流れる残酷な時間の流れが
それら全ての要素を彼から奪ってしまう。


それに反比例するように、前作では
自身の高度な学歴や出自を生かしきれず
辛酸をなめ続けたエドメが、
シェリの出征に端を発するビジネスライフで
生き生きと自立と地位、

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そして自尊心を獲得していきます。


人妻を愛したウェルテルや、マノンを愛した
シュヴァリエのように
心の清浄と自尊心を喪失していくにつれ、
シェリは嫉妬深く、怒りやすく、
打たれ弱くなっていく。恋の盲目の為に
分人を持たなかった
多くの文学世界の主人公たちのような、
そんな悲しき末路か。

そのようなことを想うこの頃。





一途。それ故の脆さ。




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本作のシェリ含め、多くの文学作品に登場する
「最終的に自壊する人格像」というものには
共通したアイデンティティ
があるような気がします。 それは、

一つの物事への異常なまでの執着。
一つの物事以外への異常な無関心。


近代の心理学には「分人」という
素敵な概念があります。
人というのは単一の人格や生甲斐だけだと
それを否定されたり喪失したら、
自分の全てが損なわれたと錯覚しがちです。
しかし、自らが単一でないことを自覚し、

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関心を分散しリスクヘッジを図ることで、
一つを傷つけられても、心に居る他の「分人」が
盾となり、歓喜や熱情に満ちた生が、
まだこの世のものであること
再確認させてくれることがあります。


文学の「最終的に自壊する人格像」に
この概念を持つ者は殆どいません。

絶望させることが文学上、
困難だからなのでしょうが、いつか僕も
そんな人間になれたら良いと思う次第。



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タグ:仏文学
posted by makomako972 at 05:00| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年01月17日

十五少年漂流記 & 蠅の王

大晦日は「ガキ使」で、新年あけたら「格付け」。
2日は親戚でワイワイ新年会。
J-comの宝塚ドリームコンサートのOAを観て
その日の夜からは暇なので仕事を再開しつつ、
趣味に関する幾つかの雑用を行い現在に至ります。

で今回は、「無人島に流された少年たち」という
同じテーマを持ちつつ全く異なった描写をする
二作について書きたいと思います。


2016


闇と憎しみ。 蠅の王



蠅の王

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ノーベル文学賞作家としても知られる
英作家、W・ゴールディングの代表作。

同氏の戦争体験に由来するリアリズム、
無頼的思想が徹底して作品を支配しており、
人間そのものへの信頼、
信託がまるで窺えません。

少年たちはまさしく、トマス・ホッブズが言う
「万人が万人に対する闘争の状態」
であると言え、その本来悪を「獣」と
比喩することで、読者を含めた登場人物全員に
"本当の恐怖は人間" であるという
事実を文学的に提示しているのが特徴です。


希望と光。 十五少年漂流記



十五少年漂流記

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フランスの大作家ジュールヴェルヌの傑作で、
明治時代より日本国内でも絶大な人気を
誇ったと言われる王道冒険活劇です。

トラジディやカタストロフを読んだり
観たりして、絶望と悲劇という題材の魅力は
多分に理解したつもりでいましたが、
少年たちが幾多の困難と抗争を乗り越え
遂には立派に生還し、家族との再会を果たす
場面を読むと、メチャメチャ感動してしまい、

「ああーやっぱこっちの方が好きだわー」 

と一言。 単純な人間なんです。僕は。
でも「蠅の王」も本当に素晴らしい作品ですヨ!
posted by makomako972 at 04:05| 読書 | 更新情報をチェックする

2016年11月17日

武器よさらば アーネスト・ヘミングウェイ

「読後、悲劇の秀作を観おわったような、さわやかなカタルシスを感じさせる。」
- 岩波文庫表紙解説より -


さわやか!?…さわやか…う~ん…さわやかね。
いや、凹んだわ。 むしろ。

「老人と海」以来、ヘミングウェイは二作目です。
文学研究者であり翻訳家であった福田恒存氏が称した
「徒労のエンターテインメント」という
作者のシンボリックなテーマが本作にも色濃く窺えます。
しかし喪失の対象が「カジキか女か」というだけの単純な
相違では測れないところに「老人と海」とは異なる重厚さを感じさせます。

武器よさらば


作者 「本作は現代のロミジュリだ」



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と言ったそうですが、
マノンレスコー、カルメン、
勿論ロミジュリも含め、愛する人が
自分の手元から消え去ってしまう
空虚を描いた小説は数多ありますが、
本作のヒロインであるキャサリン
の清らかで美しい心身は、ジュリエット
とも言えるかもしれませんが僕は寧ろ
椿姫のマルグリットを感じました。

病没という点だけでなく、両者が
読者の心を震え上がらせる究極の魅力と
読者の心を震え上がらせる究極の死を
貴族社会や戦争という不条理な
状況を使役しながら体現する姿は、
残酷を極めた悲愴そのものです。


完全なる消失と、残された軽さ。



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何気なく手にした小さなものが、
次第に自分の手に負えないほど
大きくなり、次第に自分の全てになる。

そしてそれを一瞬で失ったとき、
人は完全な空白となり、重さを失う。
ミラン・クンデラの言う

「存在の耐えられない軽さ」

の概念を作者は
痛快なまでに表現しています。
でもさわやかというより、
寧ろ凹んだけど。僕の場合。



戦争体験からのフィードバック。



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嘗てJ.Dサリンジャーは自らの
豊かな想像力と、芸術的な抽象性を駆使し、
シーモアという人知を超えた
特殊な人物を生み出し
苛烈極まる自らの戦争体験を
表現しましたが、
ヘミングウェイは写実主義的に
生々しく、戦争という悲劇を描写し
この偉大な作品を完成させています。

両者とも反戦という主義を持つ
アメリカ人作家でありながら、
全く異なる切り口で、自らの主義主張を
提示しているのは興味深い点です。



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posted by makomako972 at 03:37| 読書 | 更新情報をチェックする

2016年11月09日

嵐が丘 エミリー・ブロンテ

英文学史の中核を成す非常に優れた作品です。

天才腐女子の妄想大爆発…というのが
私的なこの作品の印象。
特にキャシーがヒースクリフに妹を紹介する場面とか
読んでてブヒりします。

キャサリンの娘がキャサリンだとか、
ヘアトンとリントンが同居だとか
構成上致し方ないものの
登場人物の名前や血縁関係が複雑なのが玉に瑕で、
読み止しでしばらく置いておくと確実に

「ヘアトン?…リントン?……えー……誰?」

となります。(僕だけか)


嵐が丘



ヒースクリフ。






女流作家の被造物とは思えぬほど
一貫して傍若無人で怜悧狡猾な
人格を体現し続ける人物ですが、
終盤、両家の世代が完全に入れ替わった
辺りからそれまでの人格に抗う
本来の彼の姿が現れ、
そのアンビバレンスな感情に抗い、
やがて死期に際して受け入れていく…
という一連の姿は、
何とも深遠で美しいですね。



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以前、世界的に有名なバラ育種家である
デイビットオースチン氏が国内に唯一作った
広大なバラ園に行ったとき
「ヒースクリフ」という品種を見つけ(写真右)
育種家もすごい人物を名前にするなぁ
と率直に感じたのですが、
今考えれば何となく合点がいく次第。





キャサリン親子。



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母娘とも良家のお嬢様らしく、
気位が高い上に理想主義が色濃く、
スタンダールの代表作
「赤と黒」に登場する
マチルドを連想させます。

特に印象深かったのは、
死に際、ヒースクリフに言った
呪いの言葉に代表されるように
母キャサリンは、終始作者の鋭い
死生観を体現しているのに対し、
娘キャサリンは、非道な行いをする
ヒースクリフに対する抵抗を、
作者の持つ数多の倫理、道徳観を
駆使して体現しているところです。



映画版



1992年のピーター・コズミンスキー監督版
「嵐が丘」もこの際なので拝見。

坂本龍一氏のシンボリックなテーマソング
が独特の雰囲気を醸し出す作品で、
ヒースクリフ役のレイフ・ファインズの
怪演がとにかく印象に残ります。
スゴい迫力。てか怖い!
あんなんと屋敷で同居とかホント勘弁。
よって観終わったとき全体印象は彼の
演技が司っていると言っても
過言ではありません。


物語はイザベラとの生活等を割愛し、
原作全てを描写することはせず、
映画というキャパを理解し、必要な
骨組みを効率よく構成しています。
そのためバタバタした印象無く
見れる秀逸な作品です。



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