2016年10月05日

映画 「聲の形」 を観に行く。

先日誕生日を迎えました。

ああ、悲しきは老い。30歳まであと一年。

思い返せば20歳になった9年前のその日、
酒を飲めるようになる喜びよりも、
もう子供として自分は生きていけないのだ…
という運命の残酷さに絶望して僕は風邪を引いたのだ! (←風邪かい!)

そして29歳になる数日前、絶望で一日中鬱みたいな気分で過ごしていると、
今回も体温計が39度の発熱を観測したわけです。
この調子では来年30歳になったときには50度くらいの熱が出るんじゃないかしら。


とそんな話は兎も角、風邪は早々に治り、その間調整していた仕事も片付いて時間ができたので
映画を見に行ってきました。山田尚子監督の「聲の形」です。


聲の形



山田監督と脚本の吉田玲子先生について。



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山田監督は「けいおん」シリーズで
知ったアニメーションディレクターですが、
脚本の吉田玲子先生は 「るろうに剣心 星霜編」
あたりから作品を拝見していたので
一癖ある作品になっているだろうとは
予想していましたが、良い意味で案の定でした。
この方の写実はアニメーションという
幻想主義世界でも一切の妥協がありません。




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しかしそれは当を得たことで、
ある種のハンディキャップを
背負った人々を題材に行われる
表現というのは、商業的成果を狙って
妙にリアリズムから外した表現を
多用したり、ジュブナイル要素を
前面に出しすぎると、社会や
障害者に対する洞察や認識が欠如している
と見られる恐れもあるどころか、
「偽善である」との誹りも
免れないセンシティブな要素なのです。




石田将也について感じたこと。



石田の境遇に見る興味深い特徴は、
「加害者と被害者」という対極の
スタンスを、幾度となく行き来する姿で、
更にその往来が当人の意思とは無関係に、
翻弄されるように変化します。
全ての意思決定が彼の意識下でありながら、
全ての事象が彼の希望から乖離した
結果を生む一連の様子から集団、全体主義の
人間関係の難しさを表しています。


同時に西宮を除いた他の主要人物と石田の
やり取りを見て感じた事は、人間は自分の
居心地の悪い立場で何のインセンティブも
なく長い期間生活するだけの忍耐力は
元来持ち合わせていないのだということです。


西宮硝子について感じたこと。



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本作で提示される西宮の自己に対する
評価の認識には、盲聾となった福島智氏の
壮絶な半生を描いた石原慎太郎氏の
ノンフィクション作品 「再生」 で描かれる
福島氏の洞察に似た諦観を感じました。
氏は自らの存在をカフカの「変身」に
登場するグレゴールに準え、

「私を全く知るはずのない他人が誰でもない
この私自身のことを書いている、書ききっている、
そうか、この俺の今在るあり様というのは
まさにこういうことだったのか、
誰がどんな同情、どんな理解をかざして
何をいってくれようと俺は虫なんだ。
奇妙な虫ということなんだなと。」
 ━第四十五頁

と述べています。


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そんな旧約聖書ヨブ記の物語のような勧善懲悪で
収まらないリアルにおいて、
彼女は自らの命を絶つ行為すら周囲に認められず、
深い絶望の底に沈んでいきます。
しかし、そんな彼女に対し石田が出した最後の答えが、
同情でも憐憫でもなく、ましてや迫害や憎悪でもなく、

「君に生きるのを手伝ってほしい」

というとても素敵で痛快な言葉だったのは、
この作品における瞠目すべき大きな魅力の一つです。
更に本作で西宮が提示する洞察や問題を最も深遠な
世界で描ききった作品としてキイスの
「アルジャーノンの花束を」がありますが、
主人公チャーリィが終盤に障害者施設を
訪問する場面に於ける洞察も
本作とリンクする部分があり興味深いですね。



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劇場版 聲の形 予告編。
 



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2016年09月02日

映画「君の名は。」を観に行く。

26日に直ぐさま観に行きたかったのですが、学生さんたちの夏休みが明けて、
人が少なくなり、尚且つ割引がある月初めに観に行く…という計画に変更し、昨日観てきました。
狙い通り、安い料金で貸切状態。平日午前とはいえ流石は和歌山です。
初週興行収入10億円クラスの人気タイトルでも自宅気分で観れます。

因みに小説版はAmazonで事前に注文しておき、映画を観た後、
帰ってきてから読み耽る…というスタイルで堪能。

「言の葉の庭」から二年、この間ずっと新海監督がツイッターで「大変だ」といいながら
手塩にかけて作り上げた渾身の傑作を、たった半日で消化するのは贅沢な話ですが、
何はともあれ、今回もホント~に素晴らしい作品でした!


※一応ネタバレ注意。
君の名は



高次元で両立する作品の大衆性と、監督の個性




文学的抒情性を前面に据え置いた前作からは
趣を変え、大衆的な要素をふんだんに
取り入れた作品で、類似作を敢えて監督の
キャリアから挙げるなら「星を追う子ども」が
最も性質的に近いような印象を受けますが、
シナリオ構成やその方向性、
映像の品質からサウンドに至るまで、
その悉くが洗練され進化しています。






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当初予告編を拝見した段階では正直、
「いよいよ新海監督も大衆路線へ変更か!?」
と一抹の不安と寂しさを抱えていたのですが、
いざ観てみると、確かに大衆的な要素も
数多く散見されるものの、監督の持ち味である
文学的な心理描写を前面に配するモノローグや、
写実的な映像美は健在で、歴代作品を見続けてきた
僕も充足した気分で観ることができました。

ま、そもそも新海さんは哲学の研究者ではなく、
一流の映画監督なのであって、初作から一貫して
提示し続けてきたテーマの方向性が本作で
変化したとしても、それは彼の過失や責任ではなく、
見る側の人間にどれだけの柔軟性や
多様性に対する認識があるかという次元の話なので、
その点では往年のファンには
知性が試されると言えるかもしれません。



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入れ替わった人格に相互が作用しつつ、
重厚な宗教的根拠にSF的なタイムリープの要素を
紐帯させ、運命論を導き出していく…
というファンタジーは、かなり派手な
設定である印象ですが、それによって瀧と三葉の
ラブストーリーが空々しくなったりする様子はなく、
二人の生み出す瑞々しいエモーショナルは
新海監督によって生み出された
ドラマチックな台詞と、愛嬌のあるキャラデザで
主軸として据えられています。  
つまり上記の感想を含め纏めると…

・万人が楽しめる大衆的要素と、
 クリエイターとしてのパーソナリティの維持。

・その大衆的要素の要となる派手な設定と、
 主人公二人のラブストーリーの共存。


の二点から深い感銘を受けた作品で、
僕にとって本作品は、「星を追う子ども」よりも
監督の個性を感じさせてくれる作品でありながら、
「秒速」や「言の葉」よりも大衆的な
エンターテイメント性を持つ作品であるという印象です。





小説版。




誰そ彼と われをな問いそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ



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古典教師の言葉に対し、それは「カタワレ時」だと
一笑に付す一つの短歌から、
物語はシンボリックに始まりを告げます。

ってかクラスの君たち。
ユキちゃん先生の話だけは真面目に聞きなさい。
この人はね。今でこそ穏やかに
授業をやってるけどね。
チョット前までそれはそれは
大変な感情のやり取りを東京でやってry

…とそんな話は兎も角、、
映画版とはシーンの違いも幾つかあり、
映画のシーンにはなかった要素は
勿論のこと、映画版にはあるけど小説版には無い
シーンなどもあり、比較すると作品の理解を補填できます。

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構成はライトノベル的な軽量かつ
親しみやすい文章に仕上げられており、
前作のノベライズ版とは方向性を変えてきています。 
おそらくは登場人物の年齢層を
考慮してのことかと思われますが、
思春期の男女の身体が入れ替わるというストーリー上、
多少のセクシャリティを感じさせる文章も見られます。
まあそりゃそうですよね。キレイ目を気取ってそこを
省略するとただの幻想作品になってしまいます。
かといって高尚を衒って作為的に
そこの写実性を全面に出して描きすぎると
エグくなるので、このライトな文章構成は
均衡を保つ上でも
理にかなっているといえるかとも思うわけです。



背景美術と音楽



・背景美術


新海作品の背景美術がアニメ業界において
世界屈指の芸術であることは最早僕が
言うまでもないことですが、
この極めて繊細な仕事ぶりを観た人は、
しばしば「実写のようである」という表現で賞します。
確かに全く僕も同感なのですが、
一つだけ付け加えさせていただけるなら、
「でも実写にしちゃったら、
この方の良さは何割かスポイルされてしまうかも」
ということでしょうか。
「実写に近づけたいなら、実写で撮ればいいじゃない」
という言葉で片付けられるほど新海監督が生み出す
背景美術を観た感動体験は
単純なものではないと私的には思っています。


・音楽


秒速で山崎まさよしさんの名曲を、
「言の葉の庭」ではKASHIWA Daisukeさんが
生み出した「Greenery Rain」をシンボリックかつ
叙情性豊かに使用し、本作ではRADWIMPSさんの
「前前前世」をはじめとした強く明確な世界観を
提示する曲群を、映画本作との
強い密接とシンパシーで表現しています。
新海監督の曲の使い方で最も感動を受けるのが、
まさしくその部分で、各々の曲と各々の作品の
マッチングに一分の隙もなく、まるで、
踊るダンサーと、そのダンサーの前に置かれた
鏡に写る姿を同時に見るようです。





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劇場版 君の名は。 予告編。
 



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2014年08月14日

ヤマト2199とメルダのフィギュア。

ヤマト2199のTVシリーズを観ました。
小学生の頃は8mmビデオテープに親が録画した初期のヤマト劇場版作品群を何度も何度も繰り返し見ていた人間でしたので
去年にMBS・TBS系列でOAされたこの最新作も、部分的には見ていたのですが、如何せんズボラな性格の人間なため、
キチンと毎週放送時間にテレビの前に居る…だとかマメに予約録画をする…なんていうことができず、結局見逃したかたちになっていました。

そしたら先週、何故かいきなり観たい気分になってしまい、急遽映像を入手。
朝から晩までぶっ通しで連続視聴して、見事にその魅力に嵌ってしまいました。

そして嵌った挙句、久々にフィギュアまで衝動買いした次第。
しかもメルダ。新見さんや雪、山本ではなくメルダ。  好きです。この子。 好きです。ガミラス(笑)


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アニメ本編を見て思った事とか。


ガミラスが面白い。


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ガミラス人たちの政治的事情が
垣間見れるという点が、今作の非常に大きな特徴であり、
旧作との大きな差異の一つだなと私的には思っています。
例えば度重なるガミラス軍の侵略によって、結果的に多様な人種が共存する
環境となったこの星には、一等、二等などといった所謂レイシズムのような明
確なヒエラルキーが出来上がっていたり、総統以下、各閣僚の面々にも
独自の思惑や思想、野心がチラホラと見え隠れしたりして、
お世辞にも一枚岩とは申せぬ国家首脳陣の面々も良い味を出しています。
特に若本さんが声を当てておられるヘルム・ゼーリック元帥が企てた
一連の謀反後の演説は独裁主義的な政治機構を持つ国独特の
ナショナリズムが窺えますし、若本さんの熱演もとても説得力があります。
いやー、マブラヴ オルタを思い出しますね(ゴメンナサイ…解んないですね)

宣伝情報相のセレステラも一癖あるキャラで見ていて飽きません。
読心術を持つため、他人種から迫害を受けるジレル人として、
孤高に生きる姿が気丈であるが故に寂しげで、孤独で。
なんとも強い女性独特の哀愁があって好きです。
最後は感情を抑制できずにデスラーに撃たれて重傷を負うというのも、
かなり可哀想な展開ですが、華々しい彼女らしくて良いんじゃないでしょうかね。
第14話のヤマト捕獲作戦で命を落とした
同郷のリンケとの一種のレズビアニズムを連想させる深い絆も
百合スキーの僕としては彼女が好きな理由の一つとなっています。


特徴的な一話完結回。


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アナライザーとオルタの機械同士の友情を描いた9話「時計仕掛けの虜囚」は
五十年、六十年代の米SF小説で多く取り扱われる「機械と人の倫理的境界線」に
フォーカスした内容で、劇中、同年代に活躍した作家、フィリップKディックの
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」や「流れよわが涙、と警官は言った」
などのタイトルの引用が出てきます。
2クールのTVシリーズ作品は、当たり前ですが1クール作品に比べて話数に
かなりのゆとりがありますので、こういった完全に独立した一話完結ストーリーを
挿入できると云うのも劇場版には無い大きな魅力の一つです。

上記のセレステラの話で挙げた14話のエピソードも、
アーティスティックな演出が魅力的で、私的に何となく、
九十年代、幾原邦彦氏が「少女革命ウテナ」でみせた演出や、
庵野さんのテイストに通ずるものをやはり感じます。
オートマタという科学技術の象徴を用いて、ハイテクノロジーを題材にした9話に対して
こういったESPやPSIという非科学的な要素を題材にした
弱ホラー回を加えることで、作品全体に大きな幅ができ、
バラエティ豊かで、見ごたえがあります。

「魔女」という非科学の要素を含むワードも、そういった意味では効果的なワードではあります。



このフィギュアについて。



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さて、というわけでこのフィギュアです。
メガハウスから発売されたヤマトガールズコレクションの一つで、
パフェ持ちとヘルメット持ちの2way構成となっているもので
本来は両腕、顔面、小物の組み合わせが決まっていますが、
何しろ僕はビンボー性のため、何とかしてメットとパフェを両方可愛く配置させるには
どうしたらいいかと考えた結果このような配置になりました(笑)
スプーンは本来替えの右腕に持たすのですが、
パフェの本体とグラスの間に差し込んで、右腕は「ポール持ち」を使っています。
メットもポールに留めておける
マウントステーが付属していますので、独立して置いています。
「手で抑えてないと落ちるじゃん!」とかのツッコミは無しです。宇宙なんですよ。なにせ。
そのため左腕は「パフェ腕」にしています。

塗装や造形は非常に精巧にできています。
「フィギュアといえばアルター」というのが一昔前の私的な印象でしたが、
最近はどこのメーカーも完成度の高い作品をリリースしていて驚かされます。

しかし今回フィギュアの撮影というのが如何に困難であるかを実感しました。
こういった製品のレビューを基として運営なさっているサイトさんが
上げている写真の背景が殆ど色ベタばかりな理由が解りました(笑)
複雑な立体物でありながら色も多彩なので、
背景が対象的な単色でないとディテールが散漫になってしまい、
よくわからない画像になってしまいます。
アングルも横打やロング、俯瞰などヴァリエーションを持たせたかったのですが、
僕の技術では全くキマらず、煽りばっかりとなってしまいました。


メルダのフィギュア


メルダのフィギュア


メルダのフィギュア


メルダのフィギュア


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宇宙戦艦ヤマト2199 第二章 『太陽圏の死闘』PV & 第三章 『果てしなき航海』PV
 



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2014年02月08日

言の葉の庭  新海誠

昨年2013年も才能あふれる様々な方がお作りになった作品を数多く拝見させていただきました。
どれも個性が光り、甲乙付け難い珠玉の作品の数々でしたが、私的に最も感激した一作のBD版をこのたび購入しましたのでその話でもしたいと思います。

※ちなみにネタバレ全開でいきますので、その点ご注意ください。

言の葉の庭



新海監督の作品レビューは過去に「星を追う子供」「秒速5センチメートル」「秒速5センチメートル(ノベルエディション)」 「ほしのこえ」
それなりに書かせて頂いておりますが…今回は昨年公開され、同氏のキャリアの中でも過去最高の興業成績を残された「言の葉の庭」です。



登場人物の幅広い感情表現。


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前作の星を追う子供は、古典的アニメーション作品のエッセンスを
ふんだんに盛り込んだ同氏にとって挑戦的な意味合いを含んだ作品であり、
伸び伸びとしたファンタジー要素が多く含まれた創造性と、
独創性豊かな世界観が魅力となっていましたが、
今回は男女間の複雑かつ繊細な距離感を粘り強く描いた物語である趣旨を考えると、
それ以前の作品群の延長線上に完成した一作であると定義できる側面もあり、
「秒速5センチメートル」でみられた文学的抒情性を更に
短い時間でより豊かに発展させ、尚且つそれを秀麗な美術で表現した
純粋な進化形作品であるというのが私的な印象です。
ではすべての要素が前作の踏襲で構成されているかということ、決してそうではなく、
たとえば今作では男女の年齢やそれに伴う社会的なスタンスの相違などを
キャラクターに付与させる事によって、「秒速」でみられたような貴樹と明里のような
“対等な立場と対等な想い”という同一間のイノセントにフォーカスした作りではなく、
タカオにはその歳には不釣り合いな自立性と年相応の純真さ、
翻ってユキノには大人として社会で生きていくには未成熟ともいえる
フラジールな心と大人の女性独特のミステリアスを持たせ、
双方が持つ複雑な二面性を紐帯させて
描いている点からもそれが窺い知ることができます。
物語終盤、二人の激情を表すかのような
秒速5センチメートル

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激しい雨が吹き荒れるマンションの階段でのタカオの悲痛な感情の発露も、
恰も数日前まで蕾だった花が気づかぬうちに花を咲かせ、
また散っていくかのように物語を穏やかに展開させていく
新海氏のそれまでのテイストと比較しても稀有な演出といえるかもしれません。
いずれにしても、頬に涙しながらも決して直情的に非難するだけの感情ではなく、
相手であるユキノの内に秘めた孤独や他人への不信を慮って放たれた
この言葉の数々は、ユキノが新たなる一歩を踏み出すための
啓示のような役割を果たしていたというのが、
タカオの腕の中で余韻嫋嫋に欷歔する彼女の顔前に降り注いだ
雨雲を縫う煌々たる太陽の光からもわかるわけですが、
この演出で私的に大いに驚かされたのが、これほどに劇的かつハイスピードに
人間模様が描写されているにもかかわらず、
上記の新海テイストが全く破綻していないという点です。
新海氏の真骨頂ともいえる精緻で秀麗な人間模様の描写は
あの独特の穏やかな雰囲気によって生み出されているものだと
ばかり思っていた自分としては衝撃で、このようにクオリティを維持したまま
自在にテンポを変えていけるのなら、
もはや敵なしじゃない…と初見の際は思いました(笑)



孤高に対する新海監督の認識。



更に強いシンパシーと感銘を受けたのが、
冷たい方程式

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その相反する二人が共通して背負っている「孤高」というものに対する新海氏の認識です。
本作のキャッチコピーが"愛"よりも昔、"孤悲(こい)"のものがたり。
と銘打っていることからもこれが主題と
位置付けられていることはすでに周知の事実でしょうが、
BD版の特典として収録されている新海氏のインタビューでは、

「孤独を克服しなければならないものの対象として
盲目的に描くことに対する違和感があり、人が一人の存在である時に得られるものの価値や
存在についてこの作品で描きたかった」


というようなことを語っておられなんとも印象的に残っていますが、
これは非常に鋭い洞察であります。特にゲームソフトやアニメーションというジャンルは
「他のコンテンツジャンルより比較的若い年代がマーケである」という性質も相俟ってか、
以前から、個別主義やデカダンスといったものを描くことを恰も禁忌とし自戒したかのような
クリエイター方の心理を代弁するかのように生み出された
“根底にある普遍的正義を盲信するような
利己的義侠心を付与されたキャラクターたち”

の乱立に僕自身も少なからず違和感を持っていたため
大いに共感するところであったわけであります。
ぐちゃぐちゃふわふわした乱雑な文章説明になってしまいましたが、解りやすく言うなら

「一人はダメだ!みんなじゃないとダメだ!
一人は寂しいだけで何もそこからは生み出されないんだ!」
←そ…そうなんです?

「たとえ正義だろうが、世界の危機が迫っていようが関係ない!
僕たちだけの独断で決めちゃダメなんだ!
とりあえず町の一人一人に意見を聞いてから……」
←え…ええ~…ようやく話が前に進みそうだったのに…

「誰も犠牲にしない! 
○○の命もこの世界も…
必ず俺がすべて守ってみせる!」
←気持ちは痛いほど解りますが
老婆心ながら「道徳的ジレンマと冷たい方程式」という話もチョット聞いて下されば幸いなんですが…

というような単純な話です。
カフカの変身

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しかし一般的にこれらのポリシーは
不変的事実として世に据え置ておかないといけないものでもある…
というのも大いに理解し同意できることでもありまして、
クリエイターの方々の中には
“そこに重点を置いて表現を行うことは一種義務のようなものだ”
…とお考えになっている方もいるというのもまた然りであっていいと思います。
何より僕のような、こんな捻くれた少数派の落伍者のために作品を作ることも
あまり益にならないのでまあ仕方ないといえば仕方ない話だと思うのですが、
以前コピーライターの糸井重里氏が、ゲームを作る作業は非現実的な綺麗ごとだけでは
完遂することができないというのを

「物事に光だけあてても真っ白なだけで全体を見通すことはできない、
影の部分があってはじめて立体的な構造を窺い知ることができる」


と警抜な喩えを用いて話しておられたのを印象的に記憶していますが、
私的にもそれには同意するところであります。

いずれにしてもそんな上記の新海氏の言葉からも窺い知ることができる一種の
カウンターカルチャー的な認識によるところなのか、作中には戦中戦後の
日米作家にあったような自然主義的な作風と符合する部分を少なからず感じました。
しかし、かといってかのプラハの文豪フランツカフカの作風にみられるような
カタストロフやディストピアといった読み手を選ぶような強烈な経過や結果は見られず、
そこは現代のエンターテインメント作品に慣れ親しんだ人にも
違和感なく見ることができるように鋳造されており、
物語のエピローグでは本編中で描かれたタカオとユキノの逢瀬が、
茫漠とした時間によって刹那的に失われていくような所謂“普遍的邂逅”ではないと取れるような描写が
タカオのセリフ「遠くまで歩けるようになったら…会いに行こう」という部分によって潜在的な可能性として示されています。
この点も、交差する電車の向こう側に想い人が居なかった…
という事実で新たなる一歩を踏み出す決意をした「秒速」の貴樹とは相反する描写ではありますが、
しかし手紙のやり取りだけで男女間の深い関係を継続させよう…という描写は、
他の監督さんが書いた物語なら多少は好転的に捉えることもできるかもしれませんが
何しろこの作品は、手紙だけの遠距離恋愛が消滅していく過程を描いた「秒速5センチメートル」
をお作りになったあの新海監督だということを考慮すると…どうなんでしょうネ(笑)


ロケーションと秀逸な音楽。


ちなみに新宿御苑というロケーションも秀逸であると思います。
都会の中にあって森閑とした自然豊かな閉鎖空間の背後には、
文明を象徴するかのような高層ビル群の尖塔を仰ぎ見ることができ、
タカオとユキノという日常と非日常の差を他人以上に意識して生きている二人には、
これ以上ないほど相応しい場所ですね。

音楽は全編通じてピアノソロ曲で構成されていますが、
この抒情性豊かなパッセージの数々もこの短い作品に
多大な奥行きと深みを与える一因となっています。
とりわけ本作はモノローグを除くキャラクターのセリフの総数が、
一般的な作品に比べて少なく、剰え登場する人物の頭数も限定されているので、
セリフ以外の様々な要素が生み出す情報を視聴者側が積極的に搾取し、
整理し発展させなければ作品の本質に迫れないという設計になっているので、
BGMの持つ役割の比重というのもそれに応じて必然的に重くなっていますが、
改めて場面場面を子細に見てみると、
適材適所で繊細なピアノの音色がその役目を
まさしく全うしていることが矢庭に理解できますね。

これ以外にも素晴らしいなと感じた個所を逐一書いていると、
本当にキリがないんで、とにかく最後に言いたいことは、
この作品は何度見ても本当に美しい。ということです。
映像、演出、音楽、そして言葉のすべてが美しい。

僕が作品を通じて見たかったもの、聞きたかったもの、知りたかったもの、
その全てがこのたった46分の中編作品に収められています。
ちょうど同じ時間をもって演奏されるブラームスやシベリウスの交響曲は度々

「一音たりとも無駄な音がない。すべて必然によって生み出されたものだ」

と評されることがありますが、
僕はこの作品にもそれと同じ印象を抱きました。

現在執筆中だというノベライズ版にも期待が高まる次第です。



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言の葉の庭  言の葉の庭  DSC03402AA.JPG  PB151862[1][1].jpg  hosiwo211.JPG  P6198278[1].jpg


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劇場版 言の葉の庭 & 秒速5センチメートル 予告編。
 


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2013年06月19日

ほしのこえ -The voices of a distant star- レビュー




「これからはメールが届くのに8年7ヶ月かかるの」

「25歳のノボル君、こんにちは。16歳のミカコだよ」

「ねえノボル君、私たちは……―宇宙と地上に引き裂かれた恋人同士みたいだね」





さてさて、上記の台詞からもわかるとおり、今回も抗いがたい自然の摂理、それも同じ宇宙で表現しているという意味に於いて、
その冷酷さは前回記事を書いたトム・ゴドウィンの「冷たい方程式」と似ているかなという気もする「ほしのこえ」のレビューもどきでもしたいと思います。
(因みに新海誠先生の作品レビューは、秒速5センチメートル、そして正月明けにアップした星を追う子供に続き3作目です)

P6198278[1].jpg


事実を数字で突き付けられる点も「冷たい方程式」と等質なものでありますが、
この作品は今すぐ登場人物に死を選ぶことを強要させるような事態はありません。
しかしコミック版P100では、一度宇宙へと出た長峰が晴耕雨読とは言わないまでも平凡な生活を送る以前の級友から
次第に忘れ去られていく様は、せめて登場人物だけは優しかった冷たい方程式とは違い、容赦が無く、一層辛辣であると言えるかもしれません。
当の長峰自身も物理的な意味ではタルシアンが敵と言うことになるのでしょうが、本質的な意味での敵は彼女自身の内に秘める孤独であり、
それは地球との時間差だけでなく、ワープ航法による浦島効果で、
自分だけを置いて地球にいる人たちが心体共に成長して行く事への焦りや焦燥感が至る所で伺えます。

地上に残されたノボル自身も携帯電話を肌身離さずいつも持っている姿が印象的ですが、
この姿は、新海先生が後に製作された秒速5センチメートルの貴樹に似て、
無自覚な他人への依存が、次第に破滅や堕落、無気力というマイナス感情の苗床となっていく様子が、
センシティブな心理模様によって表現されているところが、新海先生の作品らしくてイイです。

コミック版のラストにはアニメーション版、小説版のラストには存在しないコミック版だけの追記エピソードが収録されており、
たった数ページほどの内容ですが当時アニメーションしか見ていなかった僕には最高に感動的で、
私的にはこれだけでも買って良かったなと思えるエピローグでした。


P6198301[1].jpg

アニメーション本体は監督・脚本・演出・作画・美術・編集に至るまで全て新海先生が一人で行っているだけでなく、
オリジナル版では主人公ノボルの声優も彼が担当しています。
多才ですね、というだけでは処理できない一種の曲芸ともいえるこのような事が可能となったのには様々な要因があるように思います。
新海先生ご自身もとあるインタビューで、
本来は会社単位で制作するしかないアニメーション作品が、時代の流れに伴い高品質、高性能なPCやソフトウェアなどの登場したことなどで
個人の可能性が飛躍的に向上し、一人でもできることの幅が広くなったとも語っており、
その先駆けが正しく彼自身であり、また彼の作品であるとも言えます。

こういった新風はアニメーション業界のみならず、ありとあらゆる業種で発生しているようでして、
例えば以前、ビジネスマンにスポットを当てる有名なTV番組の中で
家電開発ベンチャー企業を、たった一人で開発、販売から営業まで行なっている脱サラした一人の元ビジネスマンが紹介されていていましたが、
その社長自身もインターネットによる個人単位での自己表現やビジネスチャンスの可能性に近年大きな変化が生じていると仰っていたのが印象的でした。


更に新海先生ご自身は、日本ファルコムの社員時代から数ヶ月を費やしこの「ほしのこえ」を制作したとインタビューでは語っていますが、
その理由として、会社の仕事では消化しきれない感情を自主製作としての本作にぶつけていってた…とも語っており、
彼自身、日々の生活では消化しきれなかった現状から脱却したい、或いは新たなる境地に足を踏み入れたいというその想いが、
丁度、時を同じくして台頭してきた個人の可能性を広げる新時代の環境というものと見事に合致し、
この二十五分の傑作を作り出す原動力となったのでしょう。


そういった意味で言うなら、少し話は変わりますがスティーブンキングの作品に
ショーシャンクの空にという有名な傑作があります。
この作品は冤罪で終身刑を言い渡され、刑務所に収監された主人公アンディが、
脱獄のため、小さな鶴嘴だけで数十年を費やし壁に穴を開けて脱獄に成功するという
エピソードなのですが、時折、この作品に於ける主人公の一連の境遇と振る舞いは
現実世界のライフスタイルに準えられることがあります。
というのも一般的に、刑務所に収監されていたとしても、
囚人は決まった時間に牢獄を出て、仕事を行い、終わるとまた牢獄に戻っていく、、、
という作業が日々行われているわけですが、私たち一般人の私生活に於いても、
世人は世俗の仕事のために家を出て仕事を行い、終わると家に戻ってくる、、、
という多少の自由度に差があるだけで本質的には似たような
ライフスタイルであるという認識を一応の前提とした場合、
主人公アンディの囚人として一日の仕事を終え、再び牢屋に戻ってからは
ひたすら鶴橋で地道に穴を掘り、いつか理想とする自分自身の姿へと
開花させようとするその行いは、私たち一般人にとって正しく投企を
行う姿に準えられることができる、、といったものなのですが
当時まだ無名だった新海先生ご自身も、身に覚えのない罪で収監されたアンディのように、
鶴嘴ではなくパソコンを、或いはペンタブのペンを走らせながら、
まだ見ぬ自分の理想に想いを馳せつつ、黙々と投企を行っていたといえるのかもしれません。





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